PROJECT
STORY
Project 07小売業×学校=SDGs
「地産地消」と「教育」
2つの課題を同時に解決
地元事業者と学校を結び、サステナブルな地域社会へ
2021年、JA香川県はある問題に直面していました。それは、運営する農産物直売所で商品に売れ残りが生じてしまうこと。フードロスの問題を中心に、持続可能性に課題を感じていたのです。ちょうどその頃、同じ地域の中学校では、生徒自らが設定した課題の解決に向けて周囲と協働して進める「探究授業」の実現方法を模索していました。そんな2者それぞれが抱える課題を知った四国支社 ソリューション営業部門のメンバーは、両者を結びつけることで2つの課題を同時に解決する取り組みを提案しました。これは2021年を皮切りに、現在まで毎年実施しているプロジェクトです。
PROJECT MEMBERS
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セールス(法人) 小泉 忍
1999年入社
四国支社
ソリューション営業部門
担当課長 -
セールス(法人) 吉野 雄紀
2017年入社
四国支社
ソリューション営業部門
ROAD MAP
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1
スキーム構築
ドコモビジネスソリューションズが間に立ち、それまで特に接点がなかったJA香川県と地元中学校を結びつけ、3者協議を行い本プロジェクトの体制を構築。
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2
授業運営
JA香川県の直売所のフードロス削減に向けて、地元中学校の生徒たちに解決方法を考えてもらう「探究授業」を実施。プロジェクトメンバーはもちろん、さまざまな分野のプロが講師として登壇。
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3
情報発信
JA香川県からのプレスリリースを通じて本取り組みの情報を社会に発信するとともに、中学生が授業を通じて学んだことを発表するイベントを開催。店舗支援の実施に向けて世間への周知を図る。
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4
店舗支援実行
中学生が学習を通じて制作した販促ツールを農産物直売所に展示するほか、接客体験等を通じて店舗の販促支援活動を実施。売り上げ向上につながり、フードロス等の課題解決に貢献。
PHASE 01スキーム構築
逆境をきっかけに生まれた、
2者の課題を同時に解決するアイデア。
このプロジェクトは、意外にもJA香川県への提案が不採用となったことから始まった。そもそもの課題として、地元生産者らが育てた野菜や果物などの農産物を販売する直売所では、売れずに消費期限を迎えてしまう商品があり、JA香川県は食品ロスの問題に悩まされていた。その課題に対してセールス担当とともに提案に臨んだのが小泉だ。「食品ロスは単純に食料がもったいないというだけでなく、運搬や焼却にかかる廃棄コストや、それに伴うCO2の排出など、さまざまな問題につながっていたのです。そこで私たちは、消費期限の近い商品の購入を促すポイントサービスを提案しましたが、残念ながら受注には至りませんでした」。
何かほかの方法でこの課題を解決できないか。小泉らが思案していたところ、地元の中学校が「探究授業」の実施に悩んでいるという話が舞い込んできた。これは通常の座学の授業とは異なり、生徒自身が設定した課題に対して文字通り探究しながら解決を目指すプロセスで多様な学びを得るための授業だ。小泉は語る。「中学校の先生方にとって、こうした新しい授業を実施することはノウハウ不足やマンパワー的な問題もあり、ハードルが高かったのです。そこでひらめいたのが、JA香川県と中学校を結びつけることで、お互いの課題を解決するアイデアでした」。直売所のフードロス問題を解決する手段を中学生に考えてもらう授業と施策を実施し、両者のニーズを満たそうという試みだ。こうして、ドコモビジネスソリューションズを中心として、JA香川県と中学校の3者が協働するスキームが生まれた。
PHASE 02授業運営
各分野のプロに協力を仰ぎながら
中学生に向けた探究授業を運営。
続いて探究授業の設計に乗り出した。小泉らプロジェクトメンバーはJA香川県の担当者と中学校の先生と話し合い、課題の確認から中学生にどんなことを学んでほしいかといった要望を洗い出し、カリキュラムをつくった。半年間の間におよそ6〜8回の授業を実施し、各回でさまざまな分野のエキスパートが講師を務めることに決まった。
2024年度からJA香川県のアカウントマネージャーを任され、プロジェクトに加わった吉野も、教壇に立って授業を実施した。「初年度の2021年から小泉さんたちが毎年この授業を運営してきたので、私が入った4年目にはある程度のノウハウも蓄積されていました。私自身はそれまでにもさまざまなプロジェクトを経験してきましたが、今回は特に『三方良し』で関係者全員のニーズがマッチした案件だと感じ、ワクワクしましたね。私は生徒たちに授業の目的や取り組む姿勢について講義させてもらいましたが、やってみると反省点も見えてきて。次回はさらにブラッシュアップしたいです」。
授業の中身としては、タブレットを使って販促ツールを制作したり、スライドを作成して生徒たちが考えをプレゼンテーションしたりといった内容が中心。POPの制作ではアプリ開発元の社長に、PR動画の制作ではYoutuberの方に講師を依頼するなど、さまざまな人に協力をしてもらいながら、中学生が授業に関心を深められるよう工夫を凝らした。
PHASE 03情報発信
発表イベントを開催し、
生徒たちの学びの成果を披露。
およそ半年間にわたる探究授業の集大成として、農産物直売所で発表イベントを開催。制作したPR動画等について生徒たちに説明してもらうなど、学びの成果を披露する場だ。このイベントに先立ち、JA香川県からプレスリリースを発表してもらうなど世間への周知を図った。「プレスリリースの効果もあり、地場のメディアから本取り組みについて取材を受けるなど、地元の方々の注目を集めることができたと感じます」と小泉。また、イベント当日の様子についてもこう語った。「中学生たちが地産地消の大切さについて学んだことや、サステナブルな地域社会を築く上で取り組むべきと感じたことなどを発表してもらった際に、地元の関係者の方々が興味深く聞いていた姿が印象に残っています。生徒たちの成長も感じられてうれしかったですね」。
探究授業を受けた中学生たちにとっては、通常の学校教育では得られない特別な学びを体験する機会となった。吉野が語る。「改めて地元の魅力を知るきっかけにもなったのではないかと思います。地方の企業にとって、若者の県外流出はリクルート上の大きな課題。生徒たちが地元への愛着を深めて、将来も地元の企業で働きたいと考えるきっかけの1つになってくれたらいいなと思います」。
PHASE 04店舗支援実行
店舗内で販促施策を実行し、
フードロスの削減に成功。
生徒たちが制作したPOPを直売所店内に掲示し、接客体験として生徒が来店者にチラシを配布するなどの販売促進活動を実行。また、店内にデジタルサイネージの導入を提案し、生徒がつくったPR動画をサイネージ上で放映したことも来店者の反響につながったという。こうした施策の結果として、商品の売り上げ向上とフードロスの削減に成功した。吉野が語る。「売り上げが向上することで、JA香川県だけでなく地元の生産者の方々の収入アップにもつながるので、多くの方に貢献できることをうれしく感じます」。
プロジェクトを通じてJA香川県とのリレーションが強化されたと語るのは、初年度から携わってきた小泉だ。「年次を経るごとに、お客さまというよりもパートナーとしての関係性に近づいてきました。取り組みを通じてお互いを深く知ることができたので、普通に商談するよりも細かなお困りごとをキャッチしやすくなったんです。そのおかげもあって、今ではいろいろなソリューションを導入いただけています」。
中学校の先生や生徒からも探究授業は好評で、これからも毎年続けてほしいという声が届いているそう。教育現場でも小売の市場でも毎年トレンドが移り変わることや、ドコモグループのソリューションにも新しいものが加わるので、毎年それぞれの要望を持ち寄って授業コンテンツをアップデートさせていくと吉野が語る。「ロボットを導入した遠隔接客や、四国が誇る盆栽をグローバルにアピールしていく企画など、新しいことにも積極的に挑戦しているところです。さらに多くの人を巻き込んで、地域のSDGsと豊かな教育を推進していけたらと思います」。
SPECIAL COLUMN
プロジェクトメンバーに
聞いてみました!
今回のプロジェクトを通じて学んだことや、ご自身の今後の展望を教えてください!
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この取り組みを通じて、お客さまと真のパートナーシップを築くために必要なことを学びました。今後はさらに多くの地元企業様を巻き込んで授業を充実させると同時に、企業様とのリレーションを強化していきたいと考えています。企業様同士を結びつけることで新しい価値を生み出す協創的な仕事にも挑戦したいですね。
小泉 -
このプロジェクトは小泉さんが主導した最初のスキーム構築が一番の肝であり、大変な部分だったと思います。私も実際にプロジェクトに参加してみて、お客さまにサービスを提案するのとは少し違ったアプローチから関係を深めていけることを学びました。だからこそ、私もいつか自分の手でこうした案件の立ち上げを成功させたいと思います。
吉野