導入事例

ロゴ:山梨中央銀行

DXの実装ノウハウを蓄積して、
地域の“デジタル人材”育成に貢献していく導入の目的:業務効率化、ATM無線化など

左:山梨中央銀行 システム統括部 システム企画課 課長代理 飯塚陽一 氏/右:経営企画部 DX・イノベーション推進室 室長 堀口邦丈 氏
課題 対策 効果 展望
情報保護の大義名分のもとでDXによる業務効率化が遅れていた 山間部でもつながりやすいWindowsタブレットの導入 すべての行内会議において紙の資料が絶滅 DX推進をお客さまサービス向上につなげる
新しい中期経営計画で自らと地域社会のDX推進を明言 無線化して安全性を担保しつつ短工期・低コストなATM戦略を実現 セキュリティに関する行員の意識の高まりとリテラシー向上 デジタル人材育成のノウハウ公開・地域還元へ
機動的なATM運用も限界に近づいていた 提案採用には地元の営業拠点によるきめ細やかな対応も勘案

株式会社ドコモビジネスソリューションズは全国のお客さまへ営業活動を行うNTTコミュニケーションズ株式会社のグループ会社です。

課題

お客さまよりも遅れていた業務効率化
機動的なATM戦略も限界に近づいていた

地方銀行をはじめとした地域金融機関の存在意義は何だろうか。山梨中央銀行は自らの存在意義を「山梨から豊かな未来をきりひらく」と明言し、2022年4月にスタートした中期経営計画において、3つの変革ドライバーの1つとして地域社会・お客さま・自分たちの「DX実現」を掲げている。
しかし、金融機関のDX推進はそう簡単ではない。
「多くの法人のお客さまでは、営業ご担当者はすでにタブレット端末を駆使して効率的な業務を行っていました。一方の我々は、情報保全という大義名分のもと大量の紙の資料を持ち歩いていました。当行の業務効率化が遅れているのに、説得力のあるご提案ができるわけがありません」。同行の経営企画部DX・イノベーション推進室の堀口邦丈室長は、当時のジレンマを率直に吐露している。

山梨中央銀行
システム統括部 システム企画課
主任調査役 飯塚陽一 氏
山梨中央銀行
経営企画部 DX・イノベーション推進室
室長 堀口邦丈 氏

コスト負担が大きいATMの管理・運用にも悩みがあった。人口減少やキャッシュレス化も進む現在、ATMの台数や場所、運用方法などを見直す必要があるのだ。同行システム統括部システム企画課の飯塚陽一主任調査役は、具体的な悩みを次のように打ち明ける。
「ATMで使っているNTTのISDN回線(ディジタル通信モード)が2024年1月でサービス終了になることも念頭にありました。特に当行営業店以外のATMは場所や建物をお借りしていることもあり、物理的な回線を設置・撤去するのは簡単ではありません。安全性を担保しながら、コストや工期を含めて機動的に運用できるATM基盤が必要でした」。
中長期的な戦略から足元のお客さまへのサービスまで、山梨中央銀行のDX化は眼前にある大きな課題だったわけである。

対策

タブレットによる営業支援やATM無線化を実現
提案採用には地元拠点によるアフターフォローも評価

2023年3月現在、山梨中央銀行がNTT Comとドコモビジネスソリューションズの両社(以下、ドコモビジネス)(*1)を通じて導入したシステムは下表の通りだ。

(*1)2022年7月以前の、NTTドコモ、NTTコミュニケーションズによる提案も含む

目的 導入したシステム
営業ご担当者の業務効率化 Windowsタブレット/ Arcstar Universal One/ アクセスプレミアム
社内電話環境の整備 スマートフォン/ オフィスリンク/ オフィスリンク+/ MDM(Mobiconnect)
ISDN回線の代替え ドコモIoTマネージドサービスfor ATM
社内コミュニケーションの活性化・効率化 Google Workspace/ Google Meet ハードウェア

山梨中央銀行は、金融機関共通の課題でもあるセキュリティの課題を払拭して、スマートデバイスを活用した業務効率やコミュニケーション活性化に取り組んでいる。
渉外担当者の支援ツールとして導入したWindowsタブレットも、セキュリティを勘案してArcstar Universal One(UNO)とアクセスプレミアムによる閉域ネットワークを採用。また、IoTマネージドサービスfor ATMによるATM無線化やオフィスリンクなどによるスマートフォン内線子機化も進めている。
堀口室長は「導入にあたって最も重視したのは、当行が必要としている機能・サービスとコストの最適化」としながら、次のように説明する。
「過剰な機能・サービスを入れないこと。何でもデジタルだ、クラウドだとなると当行では持て余してしまうし、コストも大きくなってしまう。ドコモビジネスからは『御行ならこれくらいでいいのでは』という、我々の事情を理解いただいたうえでの提案がありました」。
飯塚主任調査役は、Windowsタブレット導入当時の興味深いエピソードを紹介してくれた。
「山梨県を基盤とする当行の渉外担当者が使うということは、山間部で使えないと仕事になりません。つまり、電波のつながり具合が最も重要になります。そこで当時の担当者が県内山間部まで行き、各社のつながり具合を実際に確認したそうです。結果は『さすがドコモ』ということになったと」。

ドコモビジネスソリューションズ
ソリューション営業部 山梨支店 第一グループ
主査 小野間勇貴

ドコモビジネスの営業担当者のきめ細やかな対応も評価している。堀口室長は「当然、他社との比較検討は行いました。しかし、他社は山梨に営業拠点がなかった」と語る。
一方の飯塚主任調査役は、導入した端末の配布について思うところがあったという。「フィーチャーフォンから切り替える550台と合わせて2400台。すべてキッティング(*2)して電話番号をテプラで貼って各営業店へ納入ですから相当大変だったはず。それを業者任せにせず、ドコモビジネスが自前でやってくれました」。
(*2)各種設定やソフトウェアのインストールなどを行い、利用者がすぐに業務に使用できる状態に準備すること
それを受けて堀口室長は、「通信業界には『ラストワンマイル(*3)』という言葉がありました。DX時代のビジネスにもラストワンマイルの意味は再認識されるべきだし、それがドコモビジネスの強みなのかもしれませんね」と話していた。
(*3) 最寄りの基地局等から利用者への通信接続を提供する最後の区間

効果

行内すべての会議で紙の資料がなくなる
コロナ禍でも通常通りの業務が可能だった

ドコモビジネスのシステムを導入してどんな効果があったのか。堀口室長は「定量的な計測はしていないが」と前置きしたうえで、「はっきり言えることは、行内の会議において紙が全くなくなった」という。
また、セキュリティの観点では、どこで何が起きているかわからない紙の資料よりもデジタルで管理されたタブレットやスマートフォンの方が安全であるという認識が広がり、「DXやセキュリティに関するリテラシーが相当上がったと思います」(飯塚主任調査役)。
さらに飯塚主任調査役は、図らずもコロナ禍によって導入効果を実感できたと話す。「タブレットなどはコロナ禍以前に導入済みで行員の経験知も蓄積されていました。タブレット端末で外出先から利用可能な業務に制限を設けていた銀行もあったと聞きましたが、当行は業務を限定することなく、いつもと同じように仕事ができました」。

山梨中央銀行を担当するドコモビジネスソリューションズ山梨支店の小野間勇貴主査は当時を振り返り、「在宅勤務の拡大で利用データ量が増えたと思ったのですが、大きくは増えていませんでした。つまり、山梨中央銀行さんでは以前からタブレットやネットワークを使いこなしていらっしゃったということです」と、飯塚主任調査役の言葉を裏付ける。

展望

地域DX推進拠点「Takeda Street Base」
デジタル人材育成の研修を本格スタート

山梨中央銀行は今後も、地元経済への資金供給という本道だけでなく、人手不足解消や販路拡大、海外展開、DX支援など、お客さまの課題解決に幅広く対応していく考えだ。一例を挙げれば、現在は当行内のDX推進ツールとして活用しているGoogle Workspaceを、今後は自らが拡販しながら「ゼロトラスト」(*4)を基本とした地域DXの推進につなげていくことも考えている。
(*4)「 信頼(Trust)を何に対しても与えない(Zero)」という前提に立ったセキュリティ対策の考え方
「我々がDXを通じて合理性を追求することは、お客さまサービスの向上に必ずつながるはず。一方で我々はいつも、地域経済にどう寄与するかが問われています。ポイントになるのは人材でしょう。地方には“デジタル人材”が圧倒的に不足しています」と堀口室長。しかも、デジタルの技術的な能力だけでなく社会実装の知見を持った人材が必要なのだという。
同行はデジタル人材育成・交流の素地として、2022年7月に地域DX推進の活動拠点「Takeda Street Base」を開設。同年9月には、行内でDX人材育成のための研修プログラムを本格的にスタートさせた。

「我々が先行してDXに取り組んで、『どうしたらデジタル人材が育つのか』というノウハウを蓄積し、地域の皆さまに公開・共有しつつ還元していく。そうすることで山梨県の地域DX化に少しでも貢献できるのではないでしょうか。ドコモビジネスには新しい技術の情報提供とともに、その点でのサポートも期待しています」と、堀口室長は今後の展望を語っている。

Takeda Street Base(タケダストリートベース)
山梨中央銀行の外観

株式会社 山梨中央銀行

事業概要:
山梨県を基盤とする地方銀行。創業150 年となる2027 年を控え、長期ビジョン 「Value Creation Bank」を策定。自身の変革と持続可能な地域社会の実現に向けて 取り組んでいる。
URL
https://www.yamanashibank.co.jp/

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