導入事例

ロゴ:群馬県長野原町

過疎高齢化が進む自治体の地域課題に
プラットフォーム&アプリで最適解を。導入の目的:地域活性化、情報格差の解消など

群馬県長野原町
課題
  • ●人と人との関係性の希薄化に対するコミュニティ再構築
  • ●町が掲げるスローガン「繋ぐ」「育てる」「共に創る」実現に向けた具体策
  • ●地域による情報格差、町民と別荘利用者で異なる情報共有の利便性
対策
  • ●行政と地域事業者向けの運用管理システム「Local Government Platform」を開発
  • ●町の行政情報・観光情報・災害情報を一元化して配信する「長野原町公式アプリ」リリース
  • ●少ない町職員を徹底サポートするドコモビジネスソリューションズ群馬支店の体制
効果
  • ●従来よりも素早く効率的な情報配信を実現
  • ●スマートフォンの無料貸与やスマホ教室などの実施で高齢者のリテラシーが向上
  • ●住民からのニーズ吸い上げによって新たな機能も追加
展望
  • ●町民・地域事業者・地域外企業などとコンソーシアム結成
  • ●補助金や官費に頼らない永続的な運用システムを目指す
  • ●企業版ふるさと納税の促進、長野原町を全国に知ってもらうチャネルへ

株式会社ドコモビジネスソリューションズは全国のお客さまへ営業活動を行うNTTコミュニケーションズ株式会社のグループ会社です。

課題

人と人との関係性が希薄化
地域による情報格差が大きい

群馬県の長野原町をご存知だろうか。北軽井沢の別荘地や2020年から運用された八ッ場ダムがある町、というとピンとくるかもしれない。過疎化や高齢化など、現代の典型的な地域課題を抱える地方自治体の1つである。
そんな長野原町だが、少なくともNTT Comとドコモビジネスソリューションズの両社(以下、ドコモビジネス)(*1)の中では強い存在感を放っている。2022年7月にNTTドコモと「ICT等の活用による地域課題解決に向けた連携協定」を締結。長野原町独自のプラットフォーム「Local Government Platform(略称:LGPF)」と公式アプリを開発して、さまざまな課題解決に取り組んでいるからだ。その取り組みは、国の看板政策の1つとして2023年度予算で1,200億円の交付金を計上した「デジタル田園都市国家構想」(*2)にも採択され、全国の自治体からも関心を集めている。
一連の取り組みの推進役となったのは長野原町の萩原睦男町長である。その背景について次のように語っている。
「長野原町などの小さなローカルコミュニティでは今、人と人との関係性がかなり希薄化しています。コミュニティ再構築のために、『繋ぐ』『育てる』を町のスローガンに掲げて取り組んできました。その過程で出会ったのが、ドコモビジネスの人たち。『私たちは何十年もかけて、“繋げる”仕事をやってきました』という言葉を聞いた時にハッとしました」。

長野原町
町長 萩原睦男 氏

少子高齢化が進む山間の町、長野原町の課題は明確だった。例えば、地域による情報格差が大きいこと。隣家まで歩いて30分もかかるような地域があり、そこでは重要な情報発信・共有ツールである「回覧板」を届けるのは容易なことではない。また、町民は防災無線を無料で入手できるが、別荘地の住民は自費で用意しなければならない。
「『繋ぐ・育てる』のは、直接目を見て、手を携えながらやることーー私はこう決めつけていたようです。地域をつくることは、人をつくること。そのための情報格差の解消であり、デジタル技術の活用です。ドコモビジネスは、それをずっとやってきたという。“なるほどそうか”と目から鱗が落ちる思いがしました」(萩原町長)。
(*1)2022年7月以前の、NTTドコモ、NTTコミュニケーションズも含む
(*2)2021年に始動したデジタルの力で地方の個性を活かしながら社会課題の解決と魅力の向上を図る国家構想

対策

独自のプラットフォームとアプリを開発
町職員を徹底サポートする群馬支店の体制

ドコモビジネスでは、群馬支店の堀谷順平主査が中心となって長野原町を担当した。堀谷主査は「プラットフォームありき、アプリありきの提案はしていません」という。2021年6月の着任以来、数カ月間ほど長野原町の課題を聞き続け「その解決のために我々ができる最適解としてLGPFを構想、提案しました」(堀谷主査)。つまり、LGPFはあらかじめ用意されたサービスではなく、長野原町が現実に抱える課題から新しく生まれたソリューションなのである。
LGPFの全体像は下図の通りだ。地域住民と観光客向けの「長野原町アプリ」と、長野原町(行政)・事業者向けの運用管理システムを備えた仕組みをプラットフォームと定義した上で、すべての機能をモバイルファースト・クラウドファーストで提供する。長野原町のデータ収集・蓄積・分析・活用を実現し、さまざまな社会課題の解決につながる基盤となっている。
長野原町アプリは町の行政情報・観光情報・災害情報を一元して発信する。これで、町の住民や別荘利用者、観光客を含め長野原町すべての滞在者へ情報を伝達することが可能になり、地域全体における情報格差の解消を目指す。
LGPFは長野原町の課題解決プラットフォームとなっているが、自治体の課題や要望に応じて容易にカスタマイズできる。

長野原町DXアドバイザー
ドコモビジネスソリューションズ
ソリューション営業部 群馬支店 第一グループ 第五チーム
主査 堀谷順平

デジタル田園都市国家構想交付金など国の補助金を活用しながら町民の負担も軽減していることから、人口や産業の規模を問わず、さまざまな自治体への応用が期待できるものになっている。

長野原町役場
未来ビジョン推進課 観光商工係
主任 佐藤博史 氏

長野原町アプリは2022年11月にリリースされ、2023年4月現在のダウンロード数は約2,000。長野原町の人口比で40%、世帯数比で80%に上り、客観的には上々のスタートといえるが萩原町長は「まだまだ足りない」と満足していない。
萩原町長の叱咤激励を受けながらプラットフォームとアプリ運用を担当しているのが、長野原町未来ビジョン推進課の佐藤博史主任だ。スマートフォン教室の開催や対応事業の構築、プラットフォームの周知や事業者の参画推進などを含めて、文字通り1人で担当しているから驚きだ。もちろん他の業務もこなしながら、である。
「私はITやデータ利活用の専門知識を持っているわけではありません。1人では到底無理なことは町長も重々承知のはず。堀谷さんたちドコモビジネスの皆さんには『こんなことも頼んでいいのだろうか?』というところまで力添えいただいています」と、佐藤主任は群馬支店のサポート体制を高く評価している。

効果

従来よりも素早く効率的な情報配信を実現
町民からのニーズ吸い上げで新たなサービスも

LGPF導入の効果はシンプルだ。佐藤主任は「広報誌やイベント情報などの配信に活用していますが、従来よりも素早い配信ができるようになりました」と述べている。
長野原町ではLGPF導入に合わせて、町民を対象にスマートフォンの無料貸与を行っている。佐藤主任はその経緯について「高齢化が進む長野原町では、そもそもスマートフォンを持っていない人が多く、苦手意識を感じている人もいます。まずはスマートフォンを持って馴染んでいただかないと、プラットフォームもアプリも使ってもらえませんから」と説明する。
スマートフォンを無料貸与した上で基本的な使い方を教える「スマホ教室」を開催している。これをきっかけにスマートフォンを使い始めた85歳の町民もいるという。「高齢者の方は、使い方を教えてもすぐに覚えるのは難しい。スマホ教室は何度も繰り返し、継続的に行わないと意味がありません。これからもドコモビジネスの協力のもと、ずっと続けていきます」と佐藤主任。
2023年度はヘルスケア分野に注力していく計画だ。例えば、歩いた歩数に応じて地域の独自特典と交換できるポイントの付与や、体重や血圧などの管理ができる「ながのはらまちウォーキングポイント」と呼ばれるサービス。マイナポータル健診情報(*3)と連携しているこのサービスを、スマートウォッチと紐づける。
主に長野原町のヘルスケア分野を担当しているドコモビジネスソリューションズ群馬支店の竹下京伽は「町民の皆さんからこうしたニーズが出てくるのは、とてもうれしいですね。ウォーキングイベントを開催したりして『ながのはらまちウォーキングポイント』の参加者をもっと増やしていければ」と語っている。

長野原町はマイナンバーカードの交付に力を入れており、2022年末現在の交付率(人口比)は86.0%。全国町村の中で第3位(総務省調べ)となり、現在は90%を超えている。スマートウォッチとの連携で長野原町の健康増進施策は加速していきそうだ。
(*3)マイナポータルサイトを通じて、自分の特定健康診査項目(身長、体重、腹囲、血圧、尿検査・血液検査結果など)や薬剤情報、後期高齢者健診情報を確認できる。

ドコモビジネスソリューションズ
ソリューション営業部 群馬支店 第一グループ 第一チーム
竹下京伽

展望

コンソーシアム結成でイノベーションを起こす
補助金や官費に頼らない永続的な運用システムへ

萩原町長はLGPFについて高い評価をしているものの、まだまだ道半ばだという。
「情報格差は依然として解消されていません。高齢者を含めた多くの町民は、このアプリを使えばある程度の情報を取れることはわかったと思います。もっと多くの方々に、もっと使いこなしていただくためにどうすればよいのか。それをみんなで考えていくコンソーシアムを立ち上げます」と萩原町長。
このコンソーシアム(共同事業体)では、町民と地域の事業者、長野原町、そして地域外の企業を含めて、LGPFの継続的な進化やアプリの機能拡充を目指して議論を醸成していく。堀谷主査は「長野原町の魅力を再確認しながら外部からの参画者を募ってイノベーションを起こす狙いもあります。町の新しい収益源を生んで、町民の皆さんへ還元する仕組みを作りたいですね」と、コンソーシアム設立の背景を説明する。
萩原町長はそれを受けて、「情報格差の解消には、佐藤君が述べたように永続的な取り組みと、そのための資金が必要です。

国からの補助金は一時的なものだし、小さな町の官費で賄っていくのは難しい。『企業版ふるさと納税』の活用を促進するなど資金面においても永続的に運用できる仕組みを作ることが重要でしょう」と述べている。
「コンソーシアムで多くのステークホルダーの皆さんからの声を集めて、アプリをより生活に密着した日常使いのツールとしてブラッシュアップしていくことが、今年の大きな課題の1つです」と萩原町長。町民にとってアプリは回覧板や防災無線の代替ツールであると同時に、町外の企業や観光客へ長野原町を知ってもらうチャネルでもある。LGPFは今年、その方向でさらに進化を遂げようとしている。
長野原町は2023年4月、堀谷主査を「長野原町DXアドバイザー」に任命した。これはいわば、町のあらゆる課題解決のためにデジタル技術でできることを何でも相談できる相手。長野原町とドコモビジネスとの協業も永続的に続いていくようだ。

地元事業者の声

サービスの魅力と特典を
アプリで手軽に届ける

川原湯温泉 あそびの基地NOA
広報・PR 金子華奈 氏

キャンプ場・バーベキュー場、温泉など当施設のサービス最新情報を長野原町アプリで配信しています。最近では、新しくできた「川原湯温泉醸造所」のクラフトビール情報が喜ばれました。
SNSは県外からのお客さま向け、アプリは県内・地域内のお客さま向けと、情報配信ツールを使い分けています。アプリを使う前は、主に紙のパンフレットと地域情報誌を活用していましたが、どうしても手間とコストがかかっていました。アプリは短納期かつローコストで配信できる点がうれしいですね。
今後は10~20代の若い人向けに、より積極的にアプリを活用していく予定です。情報量とクーポンの活用がポイントになりそうですが、ドコモビジネスと町が開催するクーポン活用勉強会に参加してノウハウを習得したいと考えています。
アプリに参画する地元の事業者がより増えると、話題にもなってアプリの利用者が増えるかもしれませんね。コンソーシアムを通じて町内外の事業者や有識者との企画やイノベーションにも積極的に参画するようになれば、さらなる地域活性化につながると期待しています。

群馬県長野原町の外観

長野原町

自治体概要:
群馬県北西部にあり、町土の約80%近くが山林原野で高低差が約1000mあるという自然溢れた町。人口は5,309人(2023年1月末現在)。交通の便に恵まれ、北軽井沢の別荘地や八ッ場ダムなど観光・リゾート地としても知られている。
URL
https://www.town.naganohara.gunma.jp/www/index.html

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