導入事例

ロゴ:旭陽電気株式会社

キャリア5Gによるスマートファクトリー稼働。
「開かれた工場」として地域社会との共栄を目指す導入の目的:生産拠点のDX、業務効率化、地域創生など

左から旭陽電気株式会社 金山雄一郎氏、長田幸夫氏、浅尾恵史氏の並ぶ写真。
課題
  • ●主要取引先のDXが進み、協力会社として同様の対応が急務
  • ●円滑な社内コミュニケーションのために、より安定した通信環境が必要
  • ●多忙な総務担当スタッフの負荷を軽減し、高付加価値な業務へシフトさせたい
対策
  • ●キャリア5Gによるスマートファクトリー構想を具現化した新工場の稼働
  • ●工場の設計時に基地局や通信設備などの配置を組み込み、通信インフラを最適化
  • ●現場への綿密な事前ヒアリングと調査で問題点を把握し、業務の効率化を図る
効果
  • ●キャリア5Gで他拠点との大容量・高セキュリティな連携を低コストで実現
  • ●安定した通信環境と全拠点内線化で社内コミュニケーションが円滑に
  • ●総務担当スタッフの勤怠管理業務を50%削減。給与明細のペーパーレス化も
展望
  • ●キャリア5Gスマートファクトリーのさらなる進化
  • ●「地域に開かれた工場」として防災や地域交流の拠点へ
  • ●連携協定を結ぶドコモビジネスと協業し、地域社会との共栄を目指す

株式会社ドコモビジネスソリューションズは全国のお客さまへ営業活動を行うNTTコミュニケーションズ株式会社のグループ会社です。

課題

主要取引先が進めるDXへの対応が急務に
総務担当スタッフを高付加価値業務へシフトさせたい

 大手半導体製造装置メーカーなどによる企業城下町が形成され、「ものづくりの町」としても名高い山梨県韮崎市。旭陽電気株式会社(以下、旭陽電気)は、その韮崎市を拠点に、半導体製造装置を中心に電子部品事業、EMS(受託製造サービス)事業、社会インフラ事業を展開している。旭陽電気が経営テーマとして掲げる「デジタル」「グリーン」「レジリエンス(回復力)」を実現すべく2023年8月に稼働したのが新設の韮崎工場だ。
 3つの経営テーマのうち、特に注力している「デジタル」について、同社専務取締役で総務本部長の金山雄一郎氏は次のように説明する。
 「主要取引先が率先してDXを進めていることが大きいですね。具体的な要請があったわけではありませんが、お客さまと社会の強いニーズとして注力すべき課題だと認識しています」
 金山専務は韮崎工場の着工前に視察した、中国企業の工場で生産効率の向上が進んでいることを目のあたりにした。彼らとの競争に勝つには自社のDX推進が不可欠だと実感したという。ちょうどそのころ、社内コミュニケーションをより円滑にするために通信環境の向上を望む声が増えていた。そこで、韮崎工場を3つの経営テーマに取り組むシンボルとして、「5G・DXスマートファクトリー」※1を目指すことにした。
 しかし、その具現化は簡単ではない。それまでも、長い付き合いのある電機メーカーにDXや5Gソリューションの相談をしていたが、具体的な提案がなかなか出てこなかった。というのも、5G・DXスマートファクトリーを導入している企業は全国でも少なく、旭陽電気が参考にしたい情報そのものがなかったからだ。
 金山専務には、韮崎工場を5G・DXスマートファクトリーにすることで、従業員の業務効率化、とりわけ総務関連の業務改革を実現したいという強い思いがあった。

旭陽電気株式会社
専務取締役 総務本部長 サステナブル推進室
金山雄一郎氏

 「当社のような中小企業では、総務担当スタッフは少人数で何でもこなさなければなりません。しかし現実は、勤怠管理や給与明細、請求書の発行といった作業に、毎月何日も費やされる。これらを効率化することで生み出された時間を広報や採用、ブランディングなどの業務に充ててほしいと思っていました」(金山専務)
 そんな金山専務の思いを実現したのが、NTT Comとドコモビジネスソリューションズの両社(以下、ドコモビジネス)だ。

※1:5Gネットワークをベースに、AIやIoTといった先端テクノロジーを活用し、生産の効率化とオートメーション化などを実現する先進的な工場を指す概念

対策

キャリア5Gによるスマートファクトリー化を推進
綿密な事前調査で業務を定量化し効率アップへ

 ドコモビジネスは旭陽電気に対して、2021年春から5G活用やスマートファクトリー関連のさまざまな提案を開始。2022年から実現への動きが本格化していった。
 金山専務はドコモビジネスの提案を初めて聞いたときのことをよく覚えているという。「全国各地で5Gソリューションの実績が豊富で、そこから得られた知見が多数盛り込まれていました。我々がほしかった情報がそこにありました」
 ドコモビジネスはキャリア5Gをベースに、以下の6項目で韮崎工場のスマートファクトリー化を推進した。クラウドによる勤怠管理とペーパーレスでの給与管理 全拠点の内線化とPBX※2のクラウド化 技能者育成のためのスマートプログラム作成と実行 AI画像処理を活用した作業分析 5Gを活用した強じんな工場ネットワーク 安否確認メールによるBCP※3対策だ。このうち❶❷❸❺は韮崎工場が稼働した2023年8月に導入し、残りの項目は同年12月に検証を始めた。

旭陽電気株式会社
取締役 社長付 社会インフラ事業部 統括部長
長田幸夫氏
①クラウド勤怠管理・ペーパーレス給与管理/②全拠点内線化・PBXクラウド化/③技能者育成スマートプログラム/④AI映像による作業分析/⑤工場間の強じんな5Gネットワーク/⑥災害発生時のBCP対策
旭陽電気が韮崎工場で導入したキャリア5Gスマートファクトリーの概要 出典:ドコモビジネス
株式会社ドコモビジネスソリューションズ
ソリューション営業部 山梨支店 第一グループ 第三チーム
保坂里菜

 提案・導入にあたりドコモビジネスは、綿密な事前ヒアリングと現地調査を行った。営業担当のドコモビジネスソリューションズ山梨支店の保坂里菜は、次のように語る。「DXで業務効率化を図るためには、どの業務にどのくらいの時間がかかるのか、どの程度の効率化が見込めるのかなどを定量化する必要があります。時には仕事中にも関わらずご協力いただき、じっくり精査できました」
 取締役社会インフラ事業部統括部長の長田幸夫氏は、ドコモビジネスの“伴走支援”の深さに感心したという。「熱心にヒアリングしていただいた結果、当社の強み・課題を十分に理解してくれたのでしょう。総務関連業務の効率化に始まり、さらに当社による『オフィスリンク』※4の拡販など新しいビジネスモデルの提案まで、非常に役立ちました」

※2:電話の構内交換機

※3:災害などの緊急事態における企業や団体の事業継続計画(Business Continuity Planning)のこと

※4:PBXとNTTドコモのネットワークをつなぎ、スマートフォン・携帯電話がオフィスの内線として使えるサービス

効果

基地局設備の効率的な配置などで通信品質が格段に向上
勤怠管理業務は半減し、給与明細の完全ペーパーレス化を実現

 韮崎工場の稼働と同時に導入した「クラウドによる勤怠管理・ペーパーレスでの給与管理」は、稼働から半年を過ぎて効果が見え始めている。
 「総務部門の勤怠管理業務は、おおよそ半減しました。さらに給与明細の完全ペーパーレス化を実現しています。これまでは関連会社を含めて約500人の社員の給与明細を発行して封入するのに、毎月4人がかりで数日対応していましたが、この作業がゼロになりました」(金山専務)
 これは当初の狙い通りの結果で、総務担当スタッフが他業務へシフトしつつあるという。
 韮崎工場内にNTTドコモの5G基地局を新設。工場設計時から基地局をはじめとした通信設備を最適な場所に配置できたため、社内の通信品質も格段に向上した。社会インフラ事業部部長兼防災・水道課課長の浅尾恵史氏は「現在の通信品質に対して不満を持つ従業員はいないはず」と胸を張る。
 なかでも、広域性・汎用性に富んだキャリア5Gによるネットワーク構築は、韮崎工場と本社・本社工場(韮崎市)、甲府工場(甲府市)、宮城工場(宮城県黒川郡)との間で、大容量・高セキュリティな連携を低コストで実現。

旭陽電気株式会社
社会インフラ事業部 部長 兼 防災・水道課課長
浅尾恵史氏

秘匿性の高いデータを扱う半導体業界においても、拠点同士の距離を感じない安心・安定の通信環境を提供している。

旭陽電気株式会社
社会インフラ事業部 部長 兼 防災・水道課課長
浅尾恵史氏
【1】モバイルと固定回線を組み合わせて冗長化し、工場間ネットワークの安定稼働を実現/【2】工場ネットワーク(IP-VPN)からインターネットへの通信を一括制御しセキュリティを強化/【3】モバイル回線と工場ネットワーク(IP-VPN)を直結した高セキュリティなリモートアクセスを実現
NTTドコモのキャリア5Gによる強じんな工場ネットワークを図解 出典:ドコモビジネス

 旭陽電気とドコモビジネスは今回のプロジェクトを契機に連携協定を締結した。これは、お互いが協創パートナーとなり、さまざまな地域課題の解決を目指すものだ。ドコモビジネスが中小企業と締結するのは今回が初めてのことである。2024年1月現在、両社協業で山梨県内の他社へ提案した案件のうち、すでに4件のソリューションが受注に至っている。

 長田取締役は今回の連携協定締結について「両社がWIN-WINになることが大事。当社は山梨に拠点があり、お客さまも地元企業がほとんどなので、協業パートナーにも地域密着型の対応を求めたい。ドコモビジネスはDXの実績が豊富なうえ、甲府に拠点があるので、協業には何ら不安を感じません」と語る。

展望

「匠の技」の継承にキャリア5Gソリューションを生かす
「開かれた工場」として地域の防災・交流の拠点へ

 旭陽電気は今後、韮崎工場をはじめとしたキャリア5Gによるスマートファクトリーをさらに進化させていく。
 半導体製造装置メーカーである旭陽電気は、設計・生産の効率化を極限まで進める一方、人の手による「匠の技」を強みとしている。旭陽電気が持続可能な企業であるためには、この技術を継承することが大きな意味を持つ。そのため、今回取り入れるAI映像処理を活用した作業分析やスマートグラスの遠隔支援による技術者育成プログラムは、さらなる成長への強力なツールになるだろう。
 さらに金山専務は、韮崎工場を「地域に開かれた工場」として地域創生の旗印にしていく考えだ。工場内にある社員食堂「KYOKUYO KITCHEN」や託児所は今後、地域住民に開放できるよう準備を進めていく。

株式会社ドコモビジネスソリューションズ
ソリューション営業部 山梨支店
支店長 小川賢二

工場の通信回線を、地域社会でも利活用できる公衆網のキャリア5Gにしたのも、「開かれた工場」にしたかったためだ。「韮崎工場は地域の社会インフラとして、防災や交流の拠点にしていきます。それが、この韮崎で生まれ育った当社の使命でもあります」(金山専務)
 ドコモビジネスソリューションズ山梨支店の小川賢二支店長は「我々には、全国各地で積み上げた5GソリューションやDXの経験とノウハウが求められていると思います。それらを生かしながら、地域創生のパートナーとして旭陽電気と一緒に歩んでいきたいですね」と語る。
 今回得られた知見は、全国の中堅・中小製造業がDXを進める際に参考となるだろう。

旭陽電気株式会社の外観

旭陽電気株式会社

企業概要:
1968年創業の半導体製造装置メーカー。従業員数は460人で、売上高は100億円。関連会社に技術者育成・人材派遣・請負製造を行う旭陽エンジニアリング株式会社がある。設計から調達、製造、メンテナンスまで、一連の業務を一貫して受託し、人の手による難度の高い製造技術を得意とする。延べ床面積は約11,000m2、地下1階、地上3階建ての韮崎工場は、山梨県内初の「Nearly ZEB(ニアリー・ゼブ)」※5を取得した。(従業員数と売上高はいずれも2023年3月現在)

※5:再生可能エネルギーによって、年間のエネルギー消費量を75%以上100%未満削減した建築物を指す

URL
https://www.kyokuyo-e.co.jp/

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