すべての職員がスマートフォンを駆使し
信金業界のけん引役としてDX推進に挑む導入の目的:電話業務の負担の軽減、業務効率化、セキュリティ対策など

課題 |
|
---|---|
対策 |
|
効果 |
|
展望 |
|
株式会社ドコモビジネスソリューションズは全国のお客さまへ営業活動を行うNTTコミュニケーションズ株式会社のグループ会社です。
課題
支店の効率的な運営を進めるなかで
電話対応が大きな負担に
川崎市内を中心に56店舗を展開している川崎信用金庫(以下「川崎信金」)。その商圏は大規模工場が集積する臨海地域から、商業施設が立ち並ぶ川崎駅周辺、JRや私鉄沿線の住宅地までバラエティに富んでいる。
「当金庫の商圏は人口が多いうえ、さまざまな業種・業態の中小企業が集まっているため、お客さまの数が多いのが特徴です。Face to Faceの対面営業を武器として、狭域高密度の営業・事業を展開してきました」
そう語るのは、川崎信用金庫総務部審査役の久々津裕晶氏だ。
狭域高密度な営業体制は、競争優位につながる一方で課題もある。近年、ビジネスマッチングや事業継承、経営者・従業員の資産運用など、信用金庫が担う役割が拡大した結果、各支店において職員の業務負担が増えてきたのだ。だからといって、職員を安易に増やすことはできない。狭域高密度な営業体制を維持・展開していくには、各支店の効率的な運営が欠かせないからだ。
また、川崎信用金庫事務部副部長でシステム部門を担当する石井猛夫氏は「ご提供する金融サービスとお客さまが増えてきた支店では、さまざまなシステム化によって業務の効率を上げつつ、職員1人で何役もこなすことが当たり前になっています。そこで大きく浮かび上がってきた課題の1つが、かかってきた電話への対応でした」と話す。
支店にかかってくる電話の多くは、顧客からのものだ。担当の渉外係※1が外出中だと支店の誰かが取り次ぐため、顧客へのコールバックにタイムラグが生じてしまう。さらに本部では、内線に加えて支店や外部からの電話も多い。

審査役 久々津裕晶氏
「離席から戻ると伝言メモがずらっと並ぶことも。コールバックだけで相当な時間が取られます」(石井副部長)
具体的には、電話がすぐにつながれば1分で済むものの、取り次ぐことで相当な時間がかかる。場合によってはメッセージと伝言メモに
※1:渉外係は個人・法人の顧客に対して、金融サービスに関わるあらゆる相談を聞き、解決策を提案するのが業務。一般企業の営業職にあたる。
対策
1,000台以上のスマートフォンを貸与
渉外活動のためにセキュリティも強化
こうした電話対応の課題を解決するために2022年12月に導入したのが、NTT Com とドコモビジネスソリューションズの両社(以下「ドコモビジネス」)が提案した、スマートフォンを活用した業務ソリューションだ。これは、可能な限り川崎信金の全支店にある固定電話の削減を目指し、パート社員、派遣社員を除く職員に業務用スマートフォン(iPhone、以下「スマホ」)を貸与し、内線機能を「オフィスリンク」※2で、電話帳機能を「オフィスリンク+(Phone Appli for オフィスリンク)
」で行うものだ。
今回貸与したスマホは1,030台、すでに業務部に貸与していた370台を合わせ、「オフィスリンク」と「オフィスリンク+(Phone Appli for オフィスリンク)
」を1,400回線で構築した。顧客や職員が連絡を取りたい相手に直接話せる機会が格段に増えることで、電話の取り次ぎによる時間ロスや伝言ミスはほとんど解消される。
スマホと同時に、チャットツールの「WowTalk(ワウトーク)」も導入した。
「職員同士で用件を伝えるだけであれば、『WowTalk』にメッセージを残しておけばいい。これで電話をかける件数が減り、不要なコミュニケーションを削減できます」(石井副部長)

ソリューション営業部 神奈川支店 第一グループ 第三チーム
太田奈保海

副部長 石井猛夫氏
もちろん金融機関として、モバイル環境におけるセキュリティ対策は厳しく対応している。接続先を制限する「KAITOセキュアブラウザ」と、撮影した写真データを端末に残さずサーバーに直接転送・保存する「KAITOセキュアカメラ」も導入。さらに、端末の管理・初期化・ロックなどを遠隔から行える「mobiconnect(モビコネクト)
」も採用した。
「利便性も考慮しつつも『全職員』が『場所を問わず使用』することから、セキュリティは極力厳しくしたいと相談しました。ことあるごとに各アプリの専門家であるプロバイダーの方々と一緒に来訪いただき、門外漢である我々の質問や要望に1つひとつ丁寧に対応してくれました。大いに助かりましたね」(石井副部長)
今回の業務ソリューションの導入を提案したのは、ドコモビジネスソリューションズ神奈川支店の太田奈保海だ。「ご要望を専門的な知見を持つスタッフが直接聞いたほうが正確かつ効率的に応えられると判断し、迷惑かと思いつつ大人数で訪問することが多々ありました。満足いただける結果になってうれしい限りです」(太田)
※2:PBXとNTTドコモのネットワークをつなぎ、スマートフォン・携帯電話がオフィスの内線として使えるサービス
効果
持ち味である対面営業の機会を増やし、
コスト圧縮や渉外係の業務改革にも着手
川崎信金は具体的な調査をまだ行っていないが、相当な導入効果を得た実感がある。
「当金庫の武器である対面営業を生かすツールとして、スマホが大きな役割を果たしています。デジタル化と対面営業は相反するものと捉えがちです。しかしデジタル化によってお客さまとタイムリーにつながることができれば、対面での営業機会が増えます。その意味において、スマホの導入効果は計り知れません」(久々津審査役)
さらにこのソリューションは、通信コストの削減効果も期待できる。今回の導入で、まず専用線を解約できた。今後、固定電話、外線、内線を大きく減らしていけば、異動のたびに発生していた電話配線の変更工事や、直通番号を記載している名簿の修正作業も不要になるだろう。
「本部から10km圏内にある支店とは専用線でつなげていましたが、その契約を解除しました。今後は緊急時に使う必要最低限の回線数を精査して、減らせるところは減らしていきます」(久々津審査役)
導入効果は電話業務の負担や通信コストの軽減だけではなかった。渉外係の全員がスマホを持つことで、訪問予定の顧客情報を事前に確認したり、融資先の新商品や担保不動産などをその場で撮影・送信したりできるようになった。つまり、今回のスマホ導入によって営業最前線で業務改革が始まったといえる。
久々津審査役は実際に、ある支店長から「支店と本部の間で連絡を取るのが随分楽になった。スマホを使った業務効率化はもっとできるのでは」と声を掛けられたと言う。川崎信金では今後も、さまざまな用途のスマホ活用を検討しており、ドコモビジネスからの提案を期待したいと考えている。

展望
営業現場から新たなスマホ活用アイデアが続々生まれる
対面営業力を補完しながら地域社会の価値向上へ貢献
石井副部長はスマホ導入によって、思いがけない発見があったと話す。スマホを多くの職員が持つようになり、その便利さと可能性に気付いたそうだ。
「スマホ1台で『あれができる』『これもできそうだ』というアイデアが本部、支店から出てくるようになりました。非常にいい傾向で、そのアイデアはできる限り実践していきたいと考えています」
スマホの活用機会が増えているなかで、属人的な業務の偏りという新しい課題が見つかった。業務をよく知る人、過去の経験やノウハウが豊富な人、話しやすい人に金庫内外からの問い合わせが集中してしまうのだ。
「電話とチャットを使い分けたり、離席中はスマホを持ち歩かなくていいという内部規則を設けたりするなど、工夫はしているのですが、まだまだ試行錯誤中です」と久々津審査役。
川崎信金は今後も、長年培った対面営業の力を生かしつつスマホなどの非対面営業ツールの充実を図っていく。金融支援と経営支援の両面において金融仲介機能を積極的に提供し、自らと地域社会の価値向上につなげる考えだ。
「スマホは非対面ツールの核としてさらなる活用が求められており、その点でドコモビジネスには大いに期待しています」(久々津審査役)
スマホを活用した業務ソリューションはいわば、地域金融機関におけるDXの第一歩だ。ドコモビジネスは今後も自らの経験とノウハウを惜しみなく提供しながら、川崎信金ひいては地域社会のDXの進化・深化に寄り添っていく。


川崎信用金庫
- 組織概要:
- 1923年設立。主に、川崎、横浜、東京都大田区を営業エリアとして56店舗を展開する。役職員数1,221名、預金積金残高2兆3,036億円、貸出金残高1兆3,725億円と、神奈川県下の信用金庫としてトップクラスの規模を誇り、地元経済をけん引する重責を担う。
「身近で、気軽で、頼りになる金融機関」を目指し、地域密着・地域貢献の取り組みも積極的に行っている。(数字はいずれも2023年3月末現在) - URL
- https://www.kawashin.co.jp/