脱炭素社会の実現に向けて「かめおか脱炭素宣言」を表明、
関西でいち早く水稲栽培のJ-クレジット制度を導入
導入の目的:カーボンニュートラル、自治体、地域活性化

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株式会社ドコモビジネスソリューションズは全国のお客さまへ営業活動を行うNTTコミュニケーションズ株式会社のグループ会社です。
課題
「市内の温室効果ガス排出量実質ゼロ」を
達成する具体的な事業を模索
京都市の西方約20㎞に位置する亀岡市は、京都市内へは電車で約20分、大阪市へは約1時間とアクセスがよく、都市圏のベッドタウンとして京都府3位の人口を有する。「森の京都」と称される豊かな自然にも恵まれ、観光列車「嵯峨野トロッコ列車」や嵐山まで船で下る「保津川下り」、京の奥座敷「湯の花温泉」などの観光名所でも知られている。
もう1つ有名なのが、2020年に制定された全国初の「亀岡市プラスチック製レジ袋の提供禁止に関する条例」。有償無償に関わらずプラスチック製レジ袋の提供を禁止し、市内からレジ袋をすべてなくすという条例だ。条例施行に踏み切った背景には、市内を流れる保津川の存在がある。1990年代、若い船頭たちが川べりに大量に漂着するペットボトルやレジ袋といったプラごみの清掃活動を始めたのがきっかけだ。以来、「世界に誇れる環境先進都市づくり」を掲げる亀岡市は、市の温室効果ガスを実質ゼロにする2050年カーボンニュートラル達成に向け、「かめおか脱炭素未来プラン」を2023年に策定した。将来像である「経済循環型ゼロカーボン亀岡」実現に向け、民間事業者などから事業提案を募集した。
「1つめの課題は、温室効果ガスの削減を力強く進めていきたかったこと、2つめは環境と地域経済が循環する仕組みづくりの提案です。3つめは亀岡市が府内有数の規模を誇る穀倉地帯である特性を活かし、農業分野と連携した脱炭素の事業を考えていました」と話すのは、亀岡市環境先進都市推進部 環境政策課係長の山城一毅氏。

山城一毅氏
この3つの課題に応えたのがNTT Comとドコモビジネスソリューションズ(以下、ドコモビジネス)の提案だった。「実はドコモビジネスさんがカーボンニュートラルにも積極的に取り組まれていたことを初めて知りました。そんな意外性と、幅広い事業展開に魅力を感じました」(山城氏)
対策
温室効果ガスの削減で収益を得る
水田栽培のJ-クレジット制度を活用
ドコモビジネスが提案したのは、水稲栽培によるカーボンクレジット創出事業だ。カーボンクレジットとは、温室効果ガスの排出削減効果を売買取引できる仕組みを指す。企業などが自社努力では温室効果ガスの削減ができない分を、カーボンクレジットとして販売する生産者や団体などから購入し、温室効果ガスの排出分を相殺するものだ。
「弊社では農業や森林でカーボンクレジットを創出する事業に以前より取り組んできました。簡単な手続きで地球温暖化対策ができ、生産者のみなさんにもメリットが多い、国が認証する『J-クレジット』(図➀)制度を活用した提案をしました」とは、本案件を担当するドコモビジネスソリューションズ京都支店の山口泰輝。亀岡市に提案した「水稲栽培の中干し期間延長」は2023年4月に加わった新しいJ-クレジット制度の方法で、ドコモビジネスが携わる関西エリアでは亀岡市がいち早く取り組むことになる。京都支店には農業に携わるスタッフがいるおかげで、農業への感度は高いと話す。
「水稲栽培の中干し期間延長」を要約するとこうだ。水田では潅水によって地中のメタン菌が活性化し、温室効果ガスの1つであるメタンガスが発生する。そこで夏期に水田から水を抜いてカラカラにする「中干し」の期間を1週間延長することで、ガスの発生を抑制するというもの。水稲農家はガスの削減量をJ-クレジットとして販売し、地元企業が購入する。これらの手続きを、ドコモビジネスが運営する「Green Natural Credit」で、簡単に、効率的に信頼性の高いカーボンクレジット創出を図る(図➁)。「農地は地域資源として高いポテンシャルを秘めているので、とても魅力的な提案でした。J-クレジットを通じて地元経済がまわり、かつ温室効果ガスが削減できるという、我々がめざす環境と経済の循環が体現できます」(山城氏)

関西支社 京都支店 第一グループ 第一チーム
山口泰輝
生産者にとってもメリットが大きい。プロジェクトの管理からクレジットの売却までの業務はドコモビジネスが担当し、生産者は中干しの延長実施と必要書類の提出、取り組み状況の写真をサイトにあげるのみ。初期投資はかけず、少しの手間も地球温暖化対策に貢献でき、収入増につながる。

出典:J-クレジット制度ホームページ(https://japancredit.go.jp/)

効果
2024年度は約2t/CO₂を削減
「経済循環型ゼロカーボン」にも一歩前進
亀岡市で初の試みとなる、J-クレジット制度を活用した水稲栽培の中干し期間延長は、2024年6月から本格的にスタートした。
「制度自体が新しいため、農家さん向けの説明会では『J-クレジットって何ですか?』という質問からのスタートでした。ドコモビジネスのみなさんが農家さん一人ひとりと面談し、参加者1名でも説明会を開くといった手厚いサポートで、最終的には3組の生産者の方が手を挙げていただきました」(山城氏)
2024年度は3組で約2t/CO₂を削減した。これをJ-クレジットとして市内に工場を持つ企業が購入することが決まっている。
「小さな一歩ですが、2050年の目標達成に近づくことができました。前例ができたので、今後は農家のみなさんも参加しやすくなるでしょう。周知が進めば、いずれかのタイミングで爆発的に申込者が増えるのではと期待しています」(山城氏)
2025年度の実施に向けて2月に開催したJ-クレジット制度の説明会では、昨年度よりも多い40人以上の生産者に参加していただいた。
「生産者のみなさまへのサポートを手厚くすることで、入会のハードルを下げ、簡単に取り組めることをアピールしていきます」(山口)。分からないことがあれば、その都度メールで回答する体制をとっている。
「説明会では、『中干し期間の延長で品質が落ちるのでは?』という質問を受けましたが、2024年度はその影響はほとんどありませんでした。過去の実績のデータを提示しながらていねいに説明し、多くの方たちに参画していただけるよう尽力していきます」(山口)

この取り組みが関西エリアではトップバッターとなる亀岡市は、すでに近隣の自治体などから視察や意見交換会の依頼を受けている。J-クレジット制度の認知度が進めば、賛同する生産者や企業、市民も増えていくはずだ。
展望
多くの生産者に知ってもらい、
J-クレジット制度活用の拡大をめざす
亀岡市では、2023~2024年度にかけて調査やヒアリングを重ね、再エネ導入を促進するエリアおよび抑制すべきエリア等を法規制などと照らし合わせ区域分けをする「地域再エネ導入ゾーニング事業」を完了させた。
「『再生可能エネルギーの導入可能性検討エリア』と、J-クレジット制度などカーボンオフセットの取り組みを活用する『カーボン排出抑制エリア』などの区分けが終わり、2025年度から促進区域などの設定に向けた準備が始まります。これからはJ-クレジット制度活用の広がりがさらに期待できます」と山城氏。
「2020年の亀岡市プラスチック製レジ袋の提供禁止に関する条例施行の前には、たくさんの議論が行われ、厳しいご意見もいただきましたが、今では大きな苦情が寄せられることなく、市民に定着しています。J-クレジット制度も同じように最初は二の足を踏む方もいるでしょう。その入り口のハードルを下げるため、ドコモビジネスさんのサポートを受けながら、個々の農家さんへのていねいな説明を草の根的に続けていきたいです」(山城氏)
カーボンニュートラルだけでなく、亀岡市のさまざまな分野のお手伝いをしていきたいと山口は抱負を語る。
「京都支店では過去に亀岡市で弊社のラグビー選手による小学生向けの教室やイベントを開催しています。こうしたスポーツを通じての地域貢献や、ICT技術を活用した学校向けのソリューションなど、子どもや教育にまつわる課題解決にも取り組んでいきたいと考えています」
これからもドコモビジネスは、亀岡市の2050年のカーボンニュートラル達成と地域の発展をめざして邁進していく。

京都府亀岡市
- 組織概要:
- 京都府中央にある亀岡盆地に位置し、人口は府内第3位の約8万6,000人。2022年には「子どもファースト」宣言、2024年には「オーガニックビレッジ宣言」を行うなど、京都市のベッドタウンとしても急成長を遂げている。市面積の7割を占める森林と一級河川の桂川(保津川)が流れる自然豊かな環境で、古くから府内有数の穀倉地帯として発展し、京野菜の産地でも有名。2020年には「サンガスタジアム by KYOCERA」が誕生し、スタジアムを核としたまちづくりが行われている。
- URL
- https://www.city.kameoka.kyoto.jp