ICTを活用した陸上養殖事業を展開し
社会課題の解決と地域活性化への貢献を目指す
導入の目的:陸上養殖事業の安定化、運営の省力化など

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NTTドコモビジネスソリューションズ株式会社は全国のお客さまへ営業活動を行うNTTドコモビジネス株式会社のグループ会社です。
※2025年7月、社名変更により、ドコモビジネスソリューションズはNTTドコモビジネスソリューションズに、NTTコミュニケーションズはNTTドコモビジネスになりました。
なお、文中の記載ならびに登場人物の所属先については、2025年3月時点の情報にもとづいております。
課題
窮地に陥る日本の水産業を陸上養殖が救う
デジタル技術を駆使したプラント建設が急務に
NTTグリーン&フード株式会社(以下、NTT G&F)は、陸上養殖事業を通じた食や環境問題の課題解決、地域産業の活性化を企業理念に掲げ、2023年3月に設立した。かつて日本は水産大国と呼ばれていたが、現在、漁業と養殖業を合わせた生産量は世界12位にまで衰退している。このような国内の水産業を盛り立てていくことも、同社の重要なミッションだ。「近年の海洋環境の変化により、日本の水産業は窮地に立たされています。さらに日本の食料自給率は下がり続けていて、このままでは輸入への依存度が高まり続けるという懸念もあります。こうした社会課題を解決するために、東北復興支援から水産業に関わってきたNTTグループの知見を生かし、弊社は設立されました」と語るのは、同社の横井優子氏だ。
2024年12月、同社は静岡県磐田市に国内最大級のシロアシエビの陸上養殖プラント(以下、磐田プラント)を建設。2024年度内の初出荷を目指している。「私たちは磐田プラントを皮切りに、NTTグループで培ってきたAIやIoTなどの技術を生かし、日本各地でその土地に適した魚種による陸上養殖を展開したいと考えています。地域の皆さんのお力添えをいただきながら、陸上養殖施設を建築し、生産から販売まで一手に担うといった事業を構想しています。そのようにして、近年水揚げが減少している昔ながらの特産物を陸上養殖によって安定供給することを目指します」(横井氏)
さまざまな社会課題の解決に向けて建設された磐田プラントだが、円滑な事業運営のためにデジタル技術の活用は不可欠だった。

戦略・営業部 横井優子氏
「健康なエビを育てて安定供給するためには、水槽内の水温や溶存酸素(水中に溶けている酸素の量)を測定し、適正にコントロールする必要がありました。加えて、プラントは少人数で回しているため、メンバー同士での緊密な情報共有を図り、速やかに対処するために、プラント外からでもエビの状態を常時モニタリングできる仕組みを構築したいと考えました」(横井氏)
対策
ICTブイで水槽の水温を測定して適正に管理
スマートグラスでエビや水槽の状態を見える化
磐田プラントの建設に当たり、NTT G&Fがデジタル技術による課題解決のパートナーとして選定したのがドコモビジネスだ。

東海支社 静岡支店 第二グループ 村田康輔
「日ごろから磐田市で地域密着型の営業活動を行ってきた実績に加え、ドコモビジネスのさまざまなソリューションを提供できる提案力が評価され、NTTグループのシナジーを最大化するためにお声がけいただいたと思っています」と、同社静岡支店の村田康輔は、選定の理由を分析する。
NTT G&Fからの要望を受け、ドコモビジネスは2つのソリューションの導入提案を行った。まずは水槽内の水温などを測定し、適正にコントロールできる「ICTブイ」。これは水面に浮かべるタイプのセンサー内蔵型のブイ(浮標)により、水温や塩分濃度などのデータをドコモのネットワークを経由してスマートフォンなどでいつでも確認できるというソリューションだ。加えて、緊急時に遠隔地からでもエビの状態をモニタリングできるスマートグラスを提案した。
「当初はICTブイのみの提案でしたが、水槽の状態を遠隔地からでも確認して支援できる状態にしたいというご要望をお聞きして、スマートグラスを提案いたしました」(村田)

NTT G&Fの抱えていた課題解決策として、ドコモビジネスの提案が受け入れられ、2つのソリューションの導入が決まる。その後、磐田プラントの本稼働に向けた取り組みがスタートした。「ICTブイの導入に当たり、いちばん苦労したのが水槽内のどの位置に設置すれば正確な水温データが取れるかの調整作業です。ドコモビジネスに相談しながら最適な位置が決められたおかげで、無事に磐田プラントが本稼働できました」(横井氏)

効果
ICTブイからのアラートで水槽の危機を回避
スマートグラスもさまざまな用途で活躍
現在、磐田プラントでは1万3,000㎡の敷地に本水槽が16槽、稚エビを育てる水槽が4槽、さらにパートナー協業エリアに水質のコントロール方法が違う水槽が6槽、計26層が運用されている。「各水槽の設定温度は常にスマートフォンで確認しています。エビや藻が入った水槽については、他の機器も入れて水温を管理しているのですが、溶存酸素値は頻繁に変化するため、数値を見ながら給餌量を変えています」(横井氏)
ICTブイは、事前に設定した水温のしきい値から外れた場合、アラートが発報される仕組みになっている。「磐田プラントは、フルタイムでスタッフが稼働しているわけではありません。もし、人のいない夜間などに水槽に異常が生じてエビが全滅すれば、数千万もの損失になります。実は今年の元旦にもアラートが鳴り、クルマで駆けつけて対処できたので、どうにかエビは無事だったということがありました」(横井氏)
ICTブイと合わせて導入されたスマートグラスも、想定以上に活躍しているようだ。「磐田プラントを運営するスタッフ十数名のうち、エビの健康状態を判断して指示できるスタッフは3名程度です。

その3名が外出している状況であっても、スマートグラスを経由していつでもエビの健康状態が確認できています。また、東京本社とのリモート会議においても、出荷時期を判断する指標などにスマートグラスの映像が役立っています。将来的には、地元の磐田市の小・中学校を対象にした食育授業などでも、スマートグラスを活用したいと考えています」(横井氏)
展望
全国各地に拠点を持つドコモビジネスのサポートのもと
社会課題の解決に向け陸上養殖を全国展開へ
磐田プラントの建設はテレビのニュースや新聞、Webメディアなどで広く取り上げられ、大きな反響を呼んだ。「おかげさまで、自治体をはじめ、多くのお問い合わせをいただいています。磐田プラントは磐田市の協力のもとで進んでいますが、現在、2つめのプラント建設を宮城県気仙沼市と協力して進めており、かつて気仙沼の特産品だった銀鮭の安定供給を目指しています。同じような流れで、第3、第4のプラント建設計画も進めているところです。さまざまな社会課題の解決に向け、今後も陸上養殖の全国展開を図っていきたいと考えています」(横井氏)
「磐田プラントのおかげで、当社にも養殖事業に関するお問い合わせが増えました。全国に営業拠点を持つドコモビジネスの強みを生かし、今回の磐田プラント建設で培った経験・スキルを水平展開し、日本全国でICTブイを軸にしたソリューション提案に取り組んでいきたいと思っています」(村田)
陸上養殖プラントの全国展開を図るには、NTTグループが保有する先進的なAI、IoTといったデジタル技術の活用だけではなく、日本全国での手厚い人的サポートも不可欠と横井氏は考えている。「弊社は少人数体制で事業に取り組んでいるため、今後、陸上養殖プラントが増えていくと、たとえば地域の現場でのセンサーの故障対応などにおいて、手が回らなくなることも考えられます。そういった際に、地域に根差したドコモビジネスの強みを生かした、迅速かつ手厚い対応に期待しています。そして現場の声を吸い上げて、私たちにつないでくれるような地域のハブになっていただけたらうれしいですね」(横井氏)

NTTグリーン&フード株式会社
- 事業概要:
- 「自然の恵みを技術で活かし、地球と食の未来をデザインする」をパーパスとして、陸上養殖を軸にした環境にやさしい魚介類、その餌となる藻類の生産・販売などを行っている。
- URL
- https://www.ntt-green-and-food.com