地域医療の品質を向上
クラウド録画カメラサービス「coomonita」で、透析患者の見守りを強化
導入の目的:医療、介護、映像ソリューション、クラウド活用など

課題 |
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株式会社ドコモビジネスソリューションズは全国のお客さまへ営業活動を行うNTTコミュニケーションズ株式会社のグループ会社です。
課題
透析中の患者さんの思わぬ行動や
抜針リスクへの対応が課題に
医療法人社団仁明会おさふねクリニックは、岡山県瀬戸内市長船町で、内科一般のみならず、腎臓病、糖尿病やリウマチ・膠原病の専門的治療まで、幅広い診療を行っている地域に密着したクリニックだ。またスタッフが積極的に研究会を開催するなど、医療レベルの向上にも努め地域住民から頼りにされている。
おさふねクリニックでは、患者が透析を受けている間、針を2本血管へ穿刺(せんし)*して血液回路につなぐため、スタッフの巡回による見守りは欠かせない業務になっている。
「当院では患者さん一人一人に丁寧に対応することを常に心掛けています。なるべく患者さんから目を離さないように巡回していますが、患者さんから目が離れてしまう時間は発生してしまいます。どんなに見守りを徹底し、巡回の回数を増やしても完璧な見守りは不可能です。患者さんはこちらが思ってもいない行動をすることもあり、透析中の針が抜けてしまうなどのリスクは常にありました」と語るのは、当院の看護師長恒次永里子氏。
「機器や環境が最先端であっても最後に安全を守るのは当院のスタッフです。思わぬ抜針など命にかかわるような出来事があると何が起きてこのような事態を招いてしまったのか、目の前で見ていないと推測するしかありませんでした。どんなに巡回を行っても防ぎきれないことは起こりえます。異常を早期発見するためには人の目以外の対策も必要でした」(恒次氏)と当時を振り返る。
抜針リスクは、単に人手を増やしたり、巡回の回数を増やしたりするだけでは、解決しない。
※穿刺:血液透析を行う際に患者のシャントと呼ばれる血管に脱血用と返血用の針を刺すこと。

恒次永里子氏
人手不足を補うために目の前の患者を看視しつつほかの患者の様子も把握できるという環境がどうしても求められていた。一方で、透析医療に限らず、提供医療の品質改善活動は、当院が継続し続けてきたことだ。とくに現場で起きている診療のリスクや不安要素をあげて、それをみんなで振り返り、課題に対応していくという基本的な考え方は、院内のスタッフにも浸透している。こうしたミーティングを繰り返す中で、「透析中の患者さんの見守りを強化するにはどうしたら良いか」そんな思いは、スタッフ共通の課題になっていた。
対策
「coomonita」導入で巡回中でも
ほかの患者さんを見守れる仕組みをつくる
臨床工学技士 阿波加和美氏は、「2024年1月頃、院長より巡回の補助として映像ソリューションの導入を検討してはどうかと提案をいただき、施設内用カメラの紹介サイトのプリントを手渡され、すでに連絡済みだと伝えられた時には、その行動の速さに驚きました」と当時を振り返る。
院長が手渡したサービスこそ、NTT Comとドコモビジネスソリューションズの両社(以下、ドコモビジネス)が提供するクラウド録画カメラサービス「coomonita」だった。
院長から直接連絡を受けたのは、ドコモビジネスソリューションズ中国支社の杉本保樹。「院長自身から直接ご連絡をいただいたときは驚きました。
お話を伺うと、患者さまの事故を未然に防ぐ映像ソリューションを提案してほしい、しかも急いでいると。当初は、いただいた課題を解決できるか、という不安もありましたが、患者さまを守る大事な案件だと思い直し、その場で取り組む決意をしました」
ここから「coomonita」の本格導入に向けた取り組みが始まった。杉本から提案を受けたのは診療放射線技師 谷口顕士氏。院内の施設に関わる業務全般を幅広く担っている。谷口氏はその時の状況について「当院で映像ソリューションを効果的に導入するには3つのポイントがありました。1つは、最適なカメラの設置場所です。透析中の患者さんがどのような行動をしているのか、俯瞰的に見える必要もありますし、必要に応じて針の状況を含め患者さんの状況が把握できる画角も必要です。もう1つは、光回線の帯域幅です。現状の光回線では、帯域が狭く映像をうまくクラウドに伝送できませんでした。そして最後の1つは、コスト面です。維持費も考え、できるだけハードディスクなどの機器の購入は避けたいと思っていました」と語る。

中国支社 ソリューション営業部門
第三グループ第三チーム
杉本保樹

阿波加和美氏
おさふねクリニックでは、透析以外の診療スペースでカメラ映像を活用していたが、そちらは院内に設置したハードディスクに映像を録画するタイプだった。ちょうど機器の故障が発生しており、更改を検討しなければならないが、コストがかさむという問題も顕在化していた。そんな中、ドコモビジネスからの提案を受けて、「杉本さんとのミーティングを重ねるうちに、導入のポイントとして考えていた、3つの課題も解決できそうだと感じるようになりました」と谷口氏。
院内でのカメラの設置位置について、杉本は「何度もお客さまと折衝し、最も効果的な場所を両者で検討していきました。見切り発車するのではなく、まずシミュレーションを行いました。各箇所にカメラを設置し、実際に現場スタッフに画像や画角、使い勝手の確認をしていただきました。実運用に入っても、ほぼシュミレーション通りに映像が記録されていたのを見て、ほっとしました」帯域の狭い既存の光回線については、「光回線はシミュレーションを行う段階で、広い帯域の回線に引き換えていただきました。配線の難しい箇所もありましたがお客さまと一緒に現場を確認し、開通工事を支援していきました」と語る。
「『coomonita』がクラウド型であったことも選択の理由です」と谷口氏。「機器の買い替えコストや設置場所を気にすることなく利用できますし、光回線を引き直してからは、映像の再生もスムーズで使い勝手も良好です」。課題と思われていたポイントを一つひとつ解決したかたちだ。
効果
スタッフ巡回中の抜針リスクを低減。
「振り返れる」ことで診療品質そのものも改善
クラウド録画カメラサービス「coomonita」を導入後、恒次氏は「巡回時に特定の患者さんを見ながら、タブレッドを使ってほかの患者さんの様子も見ることができる、そんな環境がようやく整いました。映像を確認して、もし想定外の行動をされている患者さんがいれば、万が一の事故が起きる前にこちらから声をかけられます」
今では、巡回中だけでなく、気になるときにいつでも患者さんを見守れるようになっている。「最近では、院長や先生ご自身が、患者さんの様子を確認したりと、気になるところがあれば、スタッフが駆けつけることも増えています」と阿波加氏。「以前に比べて見守られている安心感がある、とお話しされる患者さんもいるようです」と続ける。
導入後には、想定しなかった効果もあった。阿波加氏は、「透析医療では、透析前後で体重確認を行い、正確に目標とする除水量の結果が出ているかどうかを確認します。これまでは、透析前後に体重を測りますが、想定した体重に誤差が発生するケースがごくまれにありました。こうした際には、原因は推測するしかないケースもあったのです。「coomonita」導入後は、映像をさかのぼって再生できるため、体重計測の際の患者さんの行動も確認できるようになりました。この結果、例えば体重を図る際に、カバンをもっていたり、上着を着ていたり、ということが確認でき、差分が発生する原因を特定することができるようになりました。患者さんの行動を見える化したことで、こうした小さなことの振り返りができるようになり、透析医療の品質は少しずつ向上できてきたと感じています」

谷口顕士氏
さらに、今回のソリューションがクラウド型であることについて谷口氏は「お客さま情報が入っている機器を院内に置かないので、安心して任せられると感じています。クリニックはあくまで診療の場です。専任のシステム担当者がいるわけでもなく、医療スタッフが役割分担してシステムを運営していかないといけません。そうしたときに、クラウド型でシステムの大事な部分をお任せできるメリットは大きいと感じています」とクラウド型システムの安心感についても話した。

展望
患者さんを見守るだけでなく、
スタッフが「気づく」仕組みづくりまで期待
クラウド録画カメラサービス「coomonita」を導入したことで、透析患者の現在の様子や過去の状況を見ることができるようになった。阿波加氏は「これからは、現状や過去に起きたことだけでなく、患者さんが普段と異なる行動や動き方をしている、あるいは、ベッドから転倒の危険がある、といったことを察知してスタッフに通知してくれる、こんな機能があればいいなと思っています」と語る。「カメラやAIがスタッフと入れ替わるというよりはスタッフの業務をサポートしてくれる、そんな存在になってくれるとよいですね」と恒次氏。
ドコモビジネスに期待することとして、「透析医療だけでなく、問診や診察分野、たとえば院内スペースでの診療の見える化の実現など、新しい提案を期待しています」(阿波加氏)
「他にも医療現場ではお客さまの個人情報も扱っています、お客さまの情報もしっかり守りながら、スタッフが働きやすくなるようなアイデアをこれからも提案してほしいです」と谷口氏は期待を込めた。
杉本は「今回の件で、地域の医療には解決できる課題がたくさんあると実感しました。狭い視野で部分的なシステムをお勧めするだけでなく、患者さまやスタッフの皆さまの目線で役立つ提案をどんどんすることで、おさふねクリニックさまと一緒に地域医療の向上に貢献していきたいと思います」と語った。

医療法人社団 仁明会
おさふねクリニック
- 組織概要:
- 岡山県間瀬戸内市長船町にあるクリニック。内科・リウマチ科・透析内科・糖尿病内科・腎臓内科・消化器内科を標榜科としています。医療に関わる教室や講演会の開催の他臨床研究を積極的に行い都市と遜色のない地域医療の品質向上に取り組んでいる。
- URL
- http://www.osafune-clinic.com/