未来への可能性を最大限に伸ばす枚方の教育
小中学校で “いつでも・どこでも” つながる通信環境を整備
導入の目的:スマート教育、業務効率化、先進的な学びなど

市長の想い
ICT教育に力を入れている枚方市では、国のGIGAスクール構想に基づき、全国でいち早く児童・生徒に1人1台LTEタブレットを配備し、子どもたちが主体的・対話的な深い学びを実現する授業スタイルへの変革をめざしてきました。タブレットの導入により、子どもたちがさまざまな課題に対して関心を持ち、自ら考え、深く探究する姿が増えました。
当初、試験的に導入したWi-Fiタブレットでは、使用できる場所が校舎内に限定されていたり、アクセスが集中してつながりにくいといった声がありましたが、LTEタブレットを導入したことで、アクセス集中の問題が解消され、教室内に限定せず、さまざまな環境で学習することができるようになりました。

特にコロナ禍のオンライン授業においては、ネット環境の整っていないご家庭の子どもでも均質に授業が受けられるLTEタブレットが大きな力を発揮し、現場の先生方の努力もあって「学びを止めない」という理念を実現することができました。
現在は、枚方市独自のICT教育モデルの中で示している「5つのC(協働・挑戦・思考・判断・創造)」といった非認知能力の視点を大切に、教育活動を展開しています。例えば、子どもたちは理科の自然観察や体育などの校舎外での学習や、遠足や修学旅行などの校外学習でも1人1台端末を持っていき、クラウドを活用した共同編集などを活用して学んでいます。また、学習内容をより深めるために、専門家からオンラインで話を聞いたり、海外の学校とオンライン交流を実施したりしました。学校という枠を越えて人と人とがつながり、自分の思いや考えを伝え合う体験が子どもたちの世界をさらに広げています。
さらに、枚方市では答えが1つではない実践的な課題に対して、主体的に解決策を提案し実現する、課題解決型学習(「PBL(Project based Learning)」)に力を入れています。先日(2024年12月5日)、本市で「GIGAフェス」という教育イベントを開催し、本市の小中学生がタブレットを片手にPBL成果を発表してくれました。例えば、昨年の1月1日に発生した能登半島地震で被災した人達のために、何かできることはないかと活動を開始した中学生チームは、実際に被災地支援を行っている方とオンラインでつながり、被災者が何に困っているのかを聞き、そして、自分たちと同じ年齢の能登の子どもたちを勇気づけたいと、枚方市に招待し、交流会を開きました。自分たちが実際に活動したことを話す彼らの姿はとてもたくましく感じました。まさに、デジタルの力によって、リアルな活動が充実することが、1人1台端末の最大の効果だと考えています。
教育長の想い
枚方市では、教育理念「夢と志を持ち、可能性に挑戦する“枚方のこども”の育成」の達成に向けて、子ども1人に1台LTEタブレットを配備し、個別最適な学びと協働的な学びの一体的な充実を支援しています。これにより子どもたちが自発的・能動的な学びを進め、特にPBL(Project Based Learning=課題解決型学習)の道筋が見えてきました。課題解決型学習では、子どもたちが課題に対して教科書、ウェブサイト、学校図書などさまざまな方法で調べ、それぞれの考えを話し合います。時には、専門家とオンラインでつながり質問をします。そうして学習した内容をプレゼンテーションソフトや動画制作ソフト、音楽制作ソフトなど、相手に伝わる表現方法を自ら選択し、成果物を作成します。これまで、全員が同じ方法で学んだりまとめたりする授業スタイルから大きく進化。LTEタブレットによって、学校に登校できない子どもは、場所を問わずどこからでも学びに参加できます。また、支援が必要な子どもに対しては、拡大文字や音声変換、翻訳機能等を活用するなど、デジタルツールがすべての子どもの学びを支える重要な役割を果たしています。さらに、AIやデータ分析の活用によって、子どもたち一人ひとりの理解度を把握し、それに応じた適切な支援や指導が可能に。デジタルの活用によって教職員の業務も効率化され、子ども一人ひとりに向き合う時間を確保する環境が整いつつあります。
子どもたちにはさまざまな経験を通じて自分の得意分野を見つけ、チャレンジし、失敗を恐れずに成長してほしいです。
また、これからは「デジタル・シティズンシップ教育」が一層不可欠であり、デジタル技術を正しく活用して社会に積極的に参加する能力を養うようにしていかなければなりません。そのためには、PBLを推進するとともに、子どもたちの情報リテラシーを一層育成することが大切です。多様な個人がそれぞれ幸せや生きがいを感じるとともに、個人を取り巻く場や地域、社会が幸せや豊かさを感じられる「ウェルビーイング(Well-being)」な社会を実現するため、学校と地域や企業等が一体となり、子どもたちが社会とつながりながら自らの価値を見出せるような取り組みが必要です。今後も子どもたちが夢や志を持ち、自分らしい未来を切り開いていくことを願っています。

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株式会社ドコモビジネスソリューションズは全国のお客さまへ営業活動を行うNTTコミュニケーションズ株式会社のグループ会社です。
課題
「教育を止めない」
そんな環境が必要でした
枚方市は大阪府の北東部に位置し、京都府に面している自治体で、京阪間のベッドタウンとして発展してきた。子育て支援や教育環境の充実に力を入れていることから、2013年から2023年の11年間、20歳から44歳の夫婦世帯で転入が転出を上回っているほか、2022年の0歳~14歳の転入超過数は大阪府内で1位と、子育て世代から特に高い注目を集めている。2020年6月に初めて、小中学校にドコモのLTE通信を活用したLTEタブレッドを採用、今回のGIGAスクール構想の第2期目では、NTT Comとドコモビジネスソリューションズの両社(以下、ドコモビジネス)が導入を支援し、全小中学校でLTEタブレットの導入を完了する。
もともと枚方市では、2019年から試験的に中学校にWi-Fiモデルタブレットを導入し、教育ICTを推進に向けた実証を行ってきた。しかしながら、実証段階では「一度にアクセスするとインターネット回線に負荷がかかり、画面が固まってしまうなど必要な学習場面で使えないことも多かったです。また、自宅にWi-Fi環境がないとインターネットにアクセスできず、調べ学習や共同編集などのクラウド環境を使用できない点にも、課題を感じていました。
そういった経験から、政府による『GIGAスクール構想』の事業では、LTEタブレットの採用が必須だと感じました」と枚方市教育委員会の永山氏は当時を振り返る。

課長 永山宜佑氏
対策
ドコモのセルラーモデルタブレットを導入
「枚方版ICT教育モデル」を作成・実践へ
GIGAスクール構想の第1期当初の計画では、複数年かけて段階的に児童・生徒への1人1台タブレットを導入する計画であったが、新型コロナウイルスの影響もあり全児童・生徒への1人1台タブレット配備が2020年度の1年間で急ピッチに進められた。

ICT 推進係 主幹 浦谷亮佑氏
「採用が決定してからは、ドコモビジネスさんには機器の調達や初期設定、キッティングだけでなく、導入前研修やトラブル対応でも大変お世話になりました。2025年1学期から2学期にかけて、新たに約35,000台を導入しますが、円滑な更新に向けてもご尽力いただいていて、頼りにしています。他自治体の運用事例やトラブル事例なども共有していただけるので、心強いです。例えば、タブレットに設定しているWebフィルタリングについて、子どもたちが安全・安心にタブレットを学習で使用するためにはどういった設定が適切なのか?といった課題にもドコモビジネスさんの方で丁寧なサポートをしていただけるので、その都度相談しながら解決をしています」と、枚方市教育委員会の浦谷氏は話す。
枚方市では、市立小中学校児童・生徒への1人1台タブレット配備完了にあわせて、ICTを効果的に活用する教育の全体像を「枚方版ICT教育モデル」として示し、「5つのCを大切に」というスローガンのもと、Challenge(挑戦)、Communication(意思伝達)、Collaboration(協働)、Creativity(創造)、Critical thinking(思考・判断)の5つを重視したICT教育の推進へ市を挙げて乗り出した。
効果
子どもたちに自発性が身に付き
教職員の校務負担の削減も実現
「タブレットは完全に“文房具”になりました。子どもたちはいわゆるデジタルネイティブですので、教員よりも使いこなすまでが速かったですね。LTEタブレットにしたことで、教室の中だけでなく、運動場や校庭、校外学習でも活用しています。気になったことをその場ですぐに調べ、内容をクラウドを通じて友だちと共有したり、友だちのまとめた内容を確認したりすることができるので、主体的に学習する習慣も身に付きました。まさに『いつでも』『どこでも』『学びを止めない』ことが実践されており、LTEタブレットの価値を感じています」と語るのは枚方市立東香里小学校の上田氏。
学習面だけでなく、教職員の校務の負担の削減も実現できた。「毎朝の出欠連絡や連絡事項の伝達、授業の準備なども時と場所を選ばずに対応することができています。従来は学校内外で行われる会議や研修会には、資料を印刷して持って行く必要がありましたが、すべてクラウド上に保存しているため、印刷時間も大幅に減りました。また、共同編集機能により、複数人で同時に資料作成をすることができるので、結果的に子どもたちに向き合う時間が多く取れるようになったことは喜ぶべきことだと思っています」と上田氏は話す。
このほかにも学校に登校できない子どもや、別室から授業に参加する子どもたちに対して、オンラインでつながり、授業を配信することで同じ進度で学習ができるといった効果も出ている。

展望
かつてできなかったことが実用化された今、
可能性への挑戦は止めない
LTEタブレットの導入で教育の形が大きく変化した枚方市。2025年度には約35,000台のタブレットの更新が控えている。そのことについて枚方市教育委員会の永山氏は「ドコモビジネスさんは、ただ端末を納入して終わりにはせず、子どもたちや教職員がすぐに使える状態に設定を行ってくれるのがありがたいです」と語る。ドコモビジネスソリューションズの中川は「定期的に打ち合わせを実施させていただき、教育委員会のみなさまのご意見やご要望を踏まえ対応させていただいています。GIGAスクール構想の第1期納入から携わり、学校で児童・生徒たちがタブレットを活用するところも見てきたので、より効果的な学習に活かせるタブレットのご提供ができるのは、私たちだからこそだと思っています」と自信をのぞかせる。
今後の課題や展望についてNTTコミュニケーションズの三善は「タブレットで教育分野にて活用できるツールやコンテンツはどんどん増えており、また進化もしていると感じています。我々からはICT支援員を通じて児童・生徒や教職員のみなさまに支援させていただいて、ツールやコンテンツを使うことに慣れ親しんでいただく、学習eポータルのまなびポケットを提供し、コンテンツの利用をはじめ児童・生徒とのコミュニケーションや保護者との連絡で活用するなど、これからもさまざまなシーンで対応させていただければと考えています」と語る。

第一ソリューション営業部門 第三グループ 中川彰宏

第二ソリューション& マーケティング営業部門
スマートエデュケーション推進チーム 主査 三善宏賢
枚方市教育委員会の永山氏は教育現場でのさらなる新技術への期待を寄せる。
「個別最適・協働的な学びの一体的な充実に向けた授業改善がタブレットを導入したことにより一層推進されてきています。社会のあり方が劇的に変化するなかで、ドコモビジネスさんにはさらなる新技術への対応を期待しています。例えば、AIを使った同時翻訳などの技術が進めば、リアルタイムで海外の子どもたちとのコミュニケーションを取ることで今まで見えなかった世界を知ることができるなど、さらに可能性が広がると思っています」
「夢と志を持ち、可能性に挑戦する“枚方のこども”の育成」を育成するという教育理念の実現に向けて、LTEタブレットを導入した枚方市。その成果はいたるところで結実している。さらなる進化へ、ドコモビジネスはこれからも教育現場を支え続ける。

大阪府枚方市
- 自治体概要:
- 大阪市と京都市のほぼ中間にあたる大阪府北東部。東西12.0km、南北8.7kmの三角形を成しており、面積は65.12km²。江戸時代には京都と大坂を結ぶ三十石船の中継港としてもにぎわう。現在は京阪電車やJR学研都市線、国道1号などが市内を走り、大阪や京都へのアクセスの良さが魅力。
- URL
- https://www.city.hirakata.osaka.jp/