アニメ映画×AR活用による松山市の聖地巡礼プロジェクト
全国のファンを呼び込む持続可能な観光DXを実現
導入の目的:観光客の滞在時間拡大、若年層誘致、地域経済活性化など
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NTTドコモビジネスソリューションズ株式会社は全国のお客さまへ営業活動を行うNTTドコモビジネス株式会社のグループ会社です。
※2025年7月、社名変更により、ドコモビジネスソリューションズはNTTドコモビジネスソリューションズに、NTTコミュニケーションズはNTTドコモビジネスになりました。
課題
道後温泉と松山城だけで終わらせない
松山市を周遊させる新施策の創出へ
四国最大の都市・松山市は、俳句や文学、道後温泉、松山城といった豊かな歴史・文化資源を持つ人口50万人の観光商業都市だ。訪れる観光客が多い一方、1泊程度の滞在で次の目的地へ移動してしまうという課題を抱えていた。
「SNSを分析すると、道後温泉と松山城だけを訪れて次に行く方が多いことが分かりました。松山市には魅力的な観光名所が多く、1度足を運んでもらえれば好きになってもらえる自信があります。そこで松山市を楽しみながら周遊できる、何らかの取り組みが必要だと考えていました」と同市総合政策部の井上典氏は語る。
従来の観光施策は歴史や文化を全世代向けにPRしていたが、若年層への訴求力が弱いという懸念があった。そんな中、松山市主催の「坊っちゃん文学賞」大賞受賞作『がんばっていきまっしょい』の劇場アニメの映画化が決定する。ボート競技に打ち込む5人の女子高生を描いた青春物語は松山市が舞台であり、近年注目されている「聖地巡礼」による観光振興の好機と考えた。
総合政策部 シティプロモーション推進課
副主幹 井上典氏
「庁内の若い職員にもアニメ好きが多く、推し活で聖地を訪ねる文化を理解していました。実施に慎重な意見もありましたが、ほかの自治体の成功事例を紹介しながら粘り強く説明を重ねた結果、ゴーサインが出たのです」(井上氏)
対策
NTTドコモビジネスソリューションズがハブとなり
チーム一丸で聖地巡礼の仕組みを構築
聖地巡礼の仕組みの一つとして、松山市が着目したのがNTTコノキューのARアプリ「XR City」※1を活用したARスタンプラリーだった。「このアプリを実装するなら、同じNTTグループのNTTドコモビジネスソリューションズ(dBS)をパートナーに選ぶのが最適と考えました。さらにARスタンプラリーのコンプリート報酬にNFT※2の配布を想定していたのですが、そのためにはカスタマイズが必要になります。そんな我々の要望に、柔軟に対応していただけたこともパートナー選定の決め手になりました」(井上氏)
XR Cityとは、予め設定したスポットにスマホのカメラをかざすことで画面上にARコンテンツを出現させるアプリだ。今回は映画にゆかりのある場所6カ所をスポットに設定して、カメラをかざすとARキャラクターが出現。聖地を巡礼するとスタンプがゲットでき、コンプリートすることで報酬のNFTへ繋げる仕組みを構築した。
四国支社 愛媛支店 主査 徳岡祐樹
四国支社 愛媛支店 坂井愛海
総合政策部 シティプロモーション推進課
主事 岸田あすか氏
「さらに今回は松山市を初めて訪れるファンの方々に楽しんでいただくために、ARスタンプラリーにdBSさんと一緒に考えたアイデアを盛り込んでいます。スポットに行ったらスタンプラリー限定のキャラクターボイスを聞けるなど、最後まで回りたくなるような工夫を施しました」と語るのは、同市総合政策部の岸田あすか氏だ。
プロジェクトには配給元の松竹をはじめ多数の関係者が関わる座組だったが、dBSがハブとなり円滑な調整を進めた。
「受託側単独で設定作業を進めるのではなく、今回は井上さんや岸田さんと現地に足を運んで、『あのスポットがいいのでは』『この角度でカメラに映す方がいいといったアイデアを出し合いました。気がつけば、観光客の皆さんより先に聖地巡礼を終えていましたね(笑)」とdBS四国支社愛媛支店の徳岡祐樹は当時を振り返る。
限定キャラクターボイスの追加提案や、地元を知るからこその周遊順の案出しなどをチーム一丸となって進めていったことで、魅力的なコンテンツが完成した。さらに成功の鍵となったのが、多角的な広報活動だ。
「地元の映画館にブースを設置し来館者へARスタンプラリーを紹介したり、ドコモショップでは映画グッズで装飾し来店者への案内を行いました。三津浜地域の商店とはdポイント還元キャンペーンで連携し、地域全体を巻き込んで盛り上げました」と、dBS四国支社愛媛支店の坂井愛海は活動のポイントを明かす。ドコモグループが一丸となって取り組んだことで大きなシナジー効果が生まれた。
※1:現在はサービス終了
※2:ブロックチェーン技術を利用してデジタルデータに唯一無二の価値を持たせる仕組み
効果
『訪れてみたい日本のアニメ聖地88』2025年版に選定
県外客12倍増、リピーターやコアファンも獲得
松山市とdBSがワンチームで取り組んだARスタンプラリーは、大きな反響を呼んだ。まず想定を上回るコンテンツダウンロード数を記録した。「dBSが自主的に継続的な広報活動を実践してくれたこともあり、徐々にダウンロード数が増えていきました。ARスタンプラリーの実施で市内の主要観光地から離れた三津浜地区への来訪者も増え、多くの人々に地域の魅力を知ってもらういい機会になったと思います」(岸田氏)
さらに映画には登場しない原作ゆかりの興居島(ごごしま)にエクストラステージを設置したところ、約150人のコアなファンが訪問したという。
「正直、この数字には感動しました。また地域店舗への波及効果も顕著で来客が2割増、県外客に限れば12倍になった店舗もあります。アニメ好きの人はアニメと一緒に聖地も愛してくれるので、既存客とのバッティングもなく地元の皆さんも喜んでくれています」(井上氏)
アニメツーリズム協会が選定する『訪れてみたい日本のアニメ聖地88』2025年版に認定されたこともあり、1周年記念上映会には北海道から駆けつけたファンや、この1年だけで松山市訪問が6度目というリピーターもいた。
「今回のARスタンプラリーは、1度ARキャラクターをゲットするとどこでも呼び出せます。たとえば東京のスポットでARキャラクターを出して撮影してSNSに投稿されたことで、拡散されるケースもありました。それを見て松山市を訪ねたくなる人が増えるという、いい循環ができたと感じています」(井上氏)
展望
今回の施策で築いた緊密な共創体制のもとで
デジタルを駆使した次なる観光体験の創出に挑む
ARスタンプラリーの施策が成功したことで周囲の評価は一転した。「市議会などでも取り上げられるようになり、議員からも追い風となる好意的な意見が出てくるようになりました。これも大きな功績だと思っています。今後も同じようなチャンスがあれば逃さずに取り組んでいきたいと考えています」(井上氏)
「個人的な話で恐縮ですが、実は異動後初の大仕事が今回の施策でした。これまでは保守的、堅実に仕事を遂行するタイプでしたが、失敗を恐れず、勢いを持ってやり切る強い意志を持つことの大切さを学びました。最初は不安もありましたが、チーム一丸となって『がんばっていきまっしょい』の精神で前に進むことができたと思います」(岸田氏)
「今回、地域密着コンテンツや聖地巡礼の大きな可能性に気付かされました。次はARスタンプラリーにとらわれず、いろいろな技術を連携させて面白いアクションを起こしていきたいです」と徳岡は意欲を示す。
坂井も「dBSは全国に拠点があり、各地域の特色や課題を深く熟知しています。今回の取り組みから得られた地域のファンを増やすノウハウを全国に展開したいです」と展望を語る。
「本取り組み後もdBSの皆さんとは別の分野でも何度も会っていろいろな情報交換をしています。これからもお互いがいいアイデアを出し合える関係でありたいと思います。何より、楽しく共創できる仲間がいることがいちばんありがたいですね」(井上氏)
ARスタンプラリー画面キャプチャ
ARスタンプラリーの設定模様
愛媛県松山市
- 組織概要:
- 松山市は、愛媛県の中央部、松山平野にあり、東は西日本の最高峰石鎚山を擁する四国山地を背景とし、西は波静かな瀬戸内海国立公園が望めます。気候は瀬戸内海気候に属し、温暖で自然災害も極めて少なく、絶好の自然条件を備えています。松山の名は、慶長8(1603)年加藤嘉明が築城した松山城にちなみ、名付けられたといわれています。明治6年愛媛県庁が設置され県都となり、明治22年12月15日市制を施行以来、政治・経済の中心都市として成長し、また、俳人正岡子規をはじめ、多くの文人を輩出するなど地方文化の拠点としての役割を果たしてきました。昭和20年、市街地の大部分を戦災により焼失しましたが、今日では総合的な都市機能を備え、平成12年4月には中核市へと移行し、平成17年1月には北条市・中島町と合併し四国初の50万都市となりました。

- URL
- https://www.city.matsuyama.ehime.jp/