ナビダイヤル導入で電話応対の負担軽減
予約相談など電話呼数実態把握も実現
導入の目的:業務効率化、入電数の管理など

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株式会社ドコモビジネスソリューションズは全国のお客さまへ営業活動を行うNTTコミュニケーションズ株式会社のグループ会社です。
課題
入電数など実態解明の対策を講じられず
患者さんからの電話に出られないことも
井上病院は創立105年を迎えた長崎市内でも歴史のある病院の1つで、かかりつけ医機能※を持つなど地域に密着した医療活動を展開している。以前は患者からの通話は、全て代表電話で受け、交換手を経て医事課スタッフや看護師への取り次ぎを行っていた。しかし、新型コロナウイルスのパンデミックの時期は対応に困難を極め「当院にもひっきりなしに電話がかかってきましたが、おそらく電話をいただいても話中が多く、長い時間お待たせしたり、最終的に受診を諦めたりした患者さまも数えきれないくらいいらっしゃったと思います。十分に地域医療を提供できたのかという不安が残りました」と吉嶺裕之院長は当時を振り返る。
しかもコロナ禍では、ほかの多くの病院と同様に患者とご家族の面会も制限され、多忙を極めた病院スタッフは、患者のご家族への連絡も滞っていたという。当時は「交換手が話を終えて電話を切ると、すぐに次の電話がかかってくる状況で、患者さんのご家族にもすぐにつながらないという声も聞きました」(吉嶺院長)。こうした事態から、電話応対の仕組みを変更する必要を感じていた。
※かかりつけ医機能
身近な地域における日常的な診療、疾病の予防のための措置その他の医療の提供を行う機能。

院長 吉嶺裕之氏
井上病院事務管理部総務課主任の宮田剛毅氏は、「コロナ禍に限らず、現場では従来入電が多く対応に追われているという話は多かったと思います」と話す。井上病院では、診療時間内の8時半から17時半までは必ず電話交換手1人が電話応対をしてきた。しかし、時間帯によっては、電話交換手だけでは対応しきれず、外来の受付担当者や会計などを担う医事課の職員も、本来の業務に従事しながら電話対応もする、ということが多かった。電話をかけてきた患者が症状を訴えている場合には、電話を転送し外来を担当する医師が直接容態を聞くなどの対応も可能だが、医師や看護師がそもそも多忙で電話を取れない状況も少なくなかった。
対策
アクセス改善のステップ1としてまずは現状把握
データ把握目的にナビダイヤル導入
宮田主任は「入電が多くて大変とはよく聞いていましたが、ではいったいどれくらいの電話がかかってきているのかというと、その実体が全くわかっていませんでした。患者さんにも病院スタッフにもメリットのある対策を講じようにも、ベースとなる入電数や電話に出られなかった不完了数が把握できていなかったのです」と、現状が把握できないことで、打つ手に困っていたと話す。
入電が多く不完了数も多ければ、回線数を増やしたり、対応できるスタッフを増やしたりといった対策も講じられる。「ベースとなる呼数のデータがないので、まずそれを知りたいと思いました」(宮田主任)。宮田主任は2024年3月に春回会が経営するほかの病院から異動してきた。そのような中、ドコモビジネスソリューションズの営業担当から前任者に対しNTT Comとドコモビジネスソリューションズの両社(以下、ドコモビジネス)が提供するナビダイヤルの提案があったことを知る。電話応対の負荷の多さを訴える現場スタッフの声を聞き、宮田主任は過去に提案のあったナビダイヤル
に改めて目を向けた。「ナビダイヤル
では、トラフィックレポートでデータが取れるということに注目しました」と振り返る。当時は、新しい外来棟のオープンを控え、職員全員が多忙な時期ではあったが、電話応対の改善も重要と本格導入を決めた。
そこからナビダイヤル導入に向けた取り組みが始まる。相談を受けたドコモビジネスソリューションズ九州支社の熊谷達矢は、「まずステップ1として現状を把握しましょう」と提案。それこそが、宮田主任が求めていたものだった。

事務管理部 総務課主任 宮田剛毅氏


効果
ナビダイヤル導入で入電数が順調に増加
次のステップへの検討も可能に
2024年11月からナビダイヤルの運用を開始。「ただちにトラフィックレポートから抽出されたデータをAIも活用して分析を始めました」(宮田主任)。
以前からの患者の中には代表電話の番号を登録している場合も少なくないため、当面はホームページ(HP)にはナビダイヤルの番号を掲載しつつ、代表電話も併用する形でスタートさせた。
導入直後の11月、ナビダイヤルに入電した呼数は、全体で1,999件あり、応対ができ、完了した電話の件数が1,553件。うまく応対ができなかった呼数は446件だった。HPへの番号を掲載し、周知が進んだ12月については、総呼数が2,847件あり、完了件数2,214件、不完了633件となった。12月にかけて着信数は増えており、ナビダイヤル
を浸透させていくという点では順調だったが、新たな問題点も顕在化してきた。
ナビダイヤルを開始してからは、現場の本来業務を優先するため、電話での「予約相談」の時間はあえて、14時から17時の間に限定した。そのため受付時間外に電話をしてしまった患者さんが、受付時間の14時になると、改めてかけなおしてくるようになり、電話の呼数が一気に増えたという。結果として、「予約相談」に関しては、取り切れない呼数が増え、完了率だけを見れば「救急」84.6%、「予約キャンセル」92.6%、「その他」90.8%と比べて45.9%と低いことが判明した。
宮田主任は「こうしたデータを取ることがゴールではありません。データが可視化されたことで次に打つ手を考えることができます。例えば、ナビダイヤルでかけていただくと現在は『救急』『予約キャンセル』『予約相談』『その他』の4つに振り分けられますが、その振り分け項目をもう少し細分化したらどうか。『予約相談』を受け付けている時間帯は対応する人を増やすことはできないか、といった院内のリソースに合った対策を講じる検討ができるようになりました。これこそナビダイヤル
導入の効果といえますね」と話す。
「予約相談」で受け付けられなかった入電は、機会ロスにもつながるため、現在、完了率を高める“次の一手”をさまざまな角度から検討している。
展望
さらなるアクセス改善に向けて
最適なソリューションの提案を期待
ナビダイヤルのトラフィックレポートから、入電する件数やそれに対応できた数、また対応できなかった数が明確になった。吉嶺院長は「2024年に新外来棟の利用が始まり、救急室の増設など受け入れ態勢の強化を図りました。さらに外部からのアクセスを改善しようということでナビダイヤル
を導入しました。アクセス向上については、得られたデータをもとに改善を図っています。今後も“何かあったら井上病院へ”と言われるような、地域の方々に安心を提供し続ける病院でありたいと考えています」と力強く語る。
「今後も業務に必要な直通電話は残す予定ですが、ゆくゆくは代表電話もナビダイヤルに一本化することもあり得ると思っています」と宮田主任はさらなる電話対応業務の改善を積極的に進めていきたいとしている。
続けて「医療DXも注目されていますが、デジタル化することがゴールではありません。デジタルを活用することで病院スタッフの働き方改革や患者さんからのアクセス向上を図る努力を続けていくことが目的であり、ゴールはまだまだ先だと考えています」と胸の内を明かす。
ナビダイヤル導入で、これから打つべき対策も明確になってきている。こうした状況を踏まえ、ドコモビジネスソリューションズの熊谷は、「電話応対については、応答できなかった携帯電話からの着信に、SNSでメッセージをお返しするツールなどもあります。これまで以上にさまざまなソリューションを提案していきたいと考えています」と意欲を示す。
「熊谷さんには、病院それぞれのニーズに合ったソリューションを提案していただきたいと思っています。SNSでの対応もそうですし、ネット予約の活用など、いろいろなソリューションを組み合わせると最適なシステムができるのでは、という期待もあります。これからもどんどん情報を提供していただければありがたいですね」と宮田主任は期待を滲ませている。
地域に根差した“かかりつけ医”として、患者本位の医療をめざす井上病院。ドコモビジネスも、その志を共有しこれまでの経験と知見を糧に地域社会の発展にともに貢献していく。

社会医療法人 春回会 井上病院
- 組織概要:
- 井上病院はJR長崎駅から徒歩12分、市内電車の電停スタジアムシティノース、同サウスから徒歩5分と交通アクセスの良い市内中心部にある。開院から105年の地域に密着した医療機関だ。「医療を通じて地域に安心を提供する」を病院理念の1つに掲げ、地域のかかりつけ医としての機能や二次救急病院として急性期医療を担う。112床を有し、内科・外科など21診療科を標榜、職員数は380人(2025年4月1日現在)。2024年6月に新外来棟を開設するとともに眼科拡充でアイセンターをオープン。
- URL
- https://www.shunkaikai.jp/inoue/