導入事例

ロゴ:静岡県焼津市

「スマートシティYAIZU」の実現に向け、データ連携基盤を活用
業務のDX推進と市民への迅速な情報提供を
導入の目的:市民サービスの向上、自治体DX推進、データ利活用など

写真左から静岡県焼津市行政経営部DX推進課 DX推進専門監 土肥慎市氏、DX推進担当係長 鈴木寿彦氏、スマートシティ推進室室長 早川隆之氏
課題
  • ●データを統合・連携し、市民サービスの向上に活用したい
  • ●庁内にどのようなデータが、どの形式で存在しているか把握できていない
  • ●デジタル田園都市国家構想※1の交付金を活用し、短期間でデータ連携基盤を構築し、サービス提供を開始したい
対策
  • ●データ連携基盤構築にSDPF for City別ウィンドウで開きます。※2を活用
  • ●データ整理の調整役として原課から兼務5人をスマートシティ推進室に配置
  • ●市役所内で活用している各種データの整合性を整理
効果
  • ●統合データを活用したデジタルマップサービスを提供
  • ●さまざまなデータをグラフなどで可視化する分析サイトを公開
  • ●機械判読可能な形式でデータを提供するAPIカタログを整備
  • ●防災メールや公式LINEと連携し、避難情報のプッシュ配信を迅速化
展望
  • ●活用しやすい公開データの提供
  • ●職員のデータに対するさらなる意識改革と人材育成
  • ●市民のニーズに対応したサービスの提供

※1:デジタル田園都市国家構想
2021年に政府が発表した地方活性化に向けた国家戦略。デジタル技術を活用し、地方の個性を活かしながら社会課題の解決と魅力の向上を狙う。

※2:SDPF for City別ウィンドウで開きます。
SDPFは、NTT Comとドコモビジネスソリューションズ(以下、ドコモビジネス)が提供する、デジタルトランスフォーメーション(DX)の実現・推進を加速させるプラットフォーム(基盤)サービス。その自治体向けがSDPF for City別ウィンドウで開きます。

株式会社ドコモビジネスソリューションズは全国のお客さまへ営業活動を行うNTTコミュニケーションズ株式会社のグループ会社です。

課題

各種のデータ統合・活用によるDX推進と
市民サービスの向上をめざして

 大都市一極集中による人口減少、少子高齢化は、多くの地方都市の抱える社会課題だ。地方都市ではその対策として、子供を産み、育てやすい環境の提供や災害にも強い安全・安心の街づくり、産業や観光の誘致などさまざまな取り組みで市民サービスの向上を試みている。
 焼津市では、こうしたサービスをさらに充実させるため、さまざまなデータを統合・連携できる仕組みとして、「データ連携基盤」を構築している。
 例えば別々の部門で管理している河川水位の日々のデータと防災に関わるデータやマップを連携することで、視覚的に地域の危険性が把握できるようになるなど、データを統合し連携することには大きなメリットがある。
 「焼津市は2021年11月にDX推進計画を策定しましたが、その段階ではデータ連携基盤の構築は2025年を目標にしていました」と、静岡県焼津市行政経営部DX推進課スマートシティ推進室室長 早川隆之氏は当時を振り返る。
静岡県焼津市行政経営部DX推進課 スマートシティ推進室室長 早川隆之氏
静岡県焼津市行政経営部DX推進課
スマートシティ推進室室長 早川隆之氏
 しかし2022年、データ連携基盤の活用を推進する、政府の「デジタル田園都市国家構想」の交付金制度が整備されたことにより、計画を前倒しして取り組むことを決断。
 「DX推進計画をつくり実現に向けて走り出したばかりの1年目に、交付金事業が決まり、計画を前倒しすることになって本当に大変な状況となりました」と静岡県焼津市行政経営部DX推進課DX推進専門監 土肥慎市氏は当時の苦労を振り返る。
静岡県焼津市行政経営部DX推進課DX推進専門監 土肥慎市氏
静岡県焼津市行政経営部DX推進課
DX推進専門監 土肥慎市氏
 当初は庁内にどういうデータがあるのかも調査しきれておらず、実現したいサービス像を描きながら、必要なデータを洗い出す作業からのスタートだったという。

対策

データ連携基盤のベースにSDPF for Cityを採用
スマートシティ推進担当の増員

株式会社ドコモビジネスソリューションズ 東海支社 ソリューション営業部門 第一グループ 担当課長 伊藤章子
株式会社ドコモビジネスソリューションズ
東海支社 ソリューション営業部門
第一グループ 担当課長 伊藤章子
 焼津市は交付金事業実施にあたり、公募型プロポーザルを実施。選定の結果、データ連携基盤を活用したサービス実装の実績があるNTTグループの提案を採用した。
 本件を担当した、ドコモビジネスソリューションズ東海支社の伊藤章子は「はじめは全国でみても前例の少ない事業で、データを連携させるための基盤をつくるには構築期間が短く、難しいプロジェクトだと感じました。それでもNTTグループの力を結集すればやり遂げられるのではと前向きに考えました」と当時を振り返る。データ連携基盤は、ドコモビジネスのソリューションである「SDPF for City別ウィンドウで開きます。」をベースに構築。
 「計画を前倒ししたことで、市の体制も整っていませんでした。市長にご相談したころ、『市民サービス向上のためなら進めるべきだ』とすぐに人員を増やすことが決まりました」と早川室長。データを保有する各部署から兼務で5人に加わってもらったほか、専任者も2人増員できたという。
 体制を固めつつ、市民サービスに提供するデータの選択や整理に取り組んだが、さまざまな課題が浮かび上がった。例えば、河川の氾濫情報などに必要な各河川に設置したセンサーによる水位計データ一つとっても、市設置と国・県設置で収集しているデータが異なる。危機管理型と一般型の水位計でそもそもの考え方に違いがあるのだ。「危機管理型は危険水位になってからデータを収集しますが、一般の水位計は随時データが更新されます。それを市民が理解しやすいようにどのように地図上で見せるか。アイコンの色をはじめ細かい部分もずいぶん議論しました」(土肥専門監)

 もう1つが“null※3問題”。「原課が運用しているそれぞれの業務システムは、開発した事業者が異なることもあり、プログラム上でいわゆるnull(未設定値)の考え方や扱いが異なります。それが違ったままだと、そもそもデータ連携ができません」と静岡県焼津市行政経営部DX推進課DX推進担当係長 鈴木寿彦氏は語る。

静岡県焼津市行政経営部DX推進課 DX推進担当係長 鈴木寿彦氏
静岡県焼津市行政経営部DX推進課
DX推進担当係長 鈴木寿彦氏

 世の中の情報の約8割は地図情報に紐づくと言われる中で、このプロジェクトでどこまで市民サービスに提供できるかという点も重要なテーマだったという。実際の導入に際しては、「ドコモビジネスさんへは整理されたデータの共有がなかなか進まない中、迅速に対応していただいたと思っています。プロジェクトの途中からは、むしろ積極的にリードしていただき、厳しいスケジュールの中でデータ連携を実現できたのはこうした姿勢があったからこそだと感謝しています」(鈴木氏)

※3 null(ヌル)
データベースでのデータ表現やプログラムでの「空白」をさす。データ連携する場合、インターフェイス上では2バイトで表現するnullが統一されていないとデータ連携できない。

効果

地図サービスの利用が増加
防災情報の活用が広がる

 データ連携基盤を活用した「スマートシティYAIZUプラットフォーム」を利用して提供されているサービスで、閲覧頻度が高いのは、防災や産業・観光、公共施設などのデータを1つの地図で重ねて見ることができる「デジタルマップ」だ。ほかにも、漁業などさまざまなデータから焼津市の今を知ることができる「分析サイト」、データによる新たなサービスの創出などを狙い事業者向けにデータを公開する「APIカタログ」、やいづ防災メールや公式LINEなどシステム間の自動連携で配信する「避難情報のプッシュ配信」などのサービスがある。
 「特に防災情報などは市民に評価されています。自治体の防災組織にこんな地図がありますと提案したら、ぜひ使うようにしたいと関心は非常に高かったですね」と鈴木係長は地図と連携した防災情報の発信に自信を深めている。
「サーバーへのリクエスト数などをみると、かなり使われてきていることがわかりますね」(早川室長)。市民からのアクセスが多い、防災情報を含めた地図データの提供は、より市民が使いやすいように改良も図っている。

展望

DX加速に向け各部局に推進リーダー設置
職員の意識改革や業務改革へ

 データ連携基盤を構築し、データ活用による市民の利便性向上に取り組んでいる現状について、早川室長は「地図に限らず、公開するデータの『見せ方』をもっと工夫して、市民がさらに使いやすい形にしていきたいですね」と語る。
 「2025年度から各部局にDX推進リーダーを置く予定です。データ連携基盤の構築と関連サービスを創出した経験を活かし、焼津市のDX推進を加速するための人材育成を進めていきます」(鈴木係長)。
 データ連携基盤の構築では他の自治体からの問い合わせも多く、同様のプロジェクトを進める他県の自治体担当者たちとのつながりもできたという。
 今後について、早川室長は「まず担当課がオーナーシップを持ってデータを管理するという体制を整えたいです。そして、市民のニーズを踏まえながら、公開可能な情報は、地図やグラフなどでわかりやすく公開していく。こうした流れを定着させることで、業務の効率化と市民サービスの継続的な向上につなげたいと考えています」と語る。データ連携基盤の整備が、市民サービスの向上にとどまらず、職員の意識改革や業務改革にも波及していくことが期待されている。
 「焼津市さまはチャレンジを続けてデータ基盤構築も早々に実現され、今後も市民の声を反映させるべく進化を追求されています。私たちもグループ一丸となって、リソースや情報を整理して、基盤を発展させ、お役に立てるご提案をしていきたいと思っています」(伊藤)。
 最後に、早川室長は「単に基盤を構築するだけでなく、データを活用した市民サービスの創出に向け、一緒に知恵を出し合っていただき感謝しています。
 今後も、市民の暮らしがより便利で快適になるように、利用者目線での提案を期待しています。あわせて、市の人材育成の面でも、ぜひ知見をお借りできればと考えています」とドコモビジネスへの期待を述べた。

 市民の幸福度を上げるために、市民に寄り添う自治体をめざしている焼津市。ドコモビジネスも、その思いを支えるパートナーとして、経験や知見を駆使して地域貢献に尽力していく。

写真左から 静岡県焼津市行政経営部DX推進課 DX推進担当係長 鈴木寿彦氏、DX推進専門監 土肥慎市氏、株式会社ドコモビジネスソリューションズ東海支社 ソリューション営業部門第一グループ 担当課長 伊藤章子、静岡県焼津市行政経営部DX推進課スマートシティ推進室室長 早川隆之氏
静岡県焼津市役所 外観

静岡県焼津市

組織概要:
焼津市は静岡県の中南部に位置し、東は駿河湾、北は日本坂峠のある山地を境に静岡市、西は藤枝市、南は大井川が吉田町、島田市との境界となっている。人口は約13万5,000人(2025年2月28日現在)。全国トップクラスの水揚量のカツオに代表されるように焼津港を中心に漁業が盛んなほか、温暖・肥沃な土地で古くから農業も盛ん。「やさしさ、愛しさ、いいもの、いっぱい世界へ拡げる水産文化都市」を掲げ、市民サービスの向上や産業誘致など魅力をアピールしている。
URL
https://www.city.yaizu.lg.jp/

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