山形市の「健康ポイント事業SUKSK(スクスク)」に
「健康マイレージ」を活用し、山形市民の健康寿命を延伸
導入の目的:市民サービス向上、自治体DX推進、健康データ利活用など

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※1「AI健康アドバイス」:
別名「AI健診」。健康診断データと日々の歩数やBMIといったスマートフォンに蓄積された生活習慣データを用いて、直近の生活習慣が継続した場合の1年後の検査値悪化リスクを毎週推定する「健康マイレージ」の機能。
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※2025年7月、社名変更により、ドコモビジネスソリューションズはNTTドコモビジネスソリューションズに、NTTコミュニケーションズはNTTドコモビジネスになりました。
課題
山形市民の健康寿命を延伸するため、
「SUKSK(スクスク)生活」を提唱
山形市は、2015年の佐藤孝弘市長就任以来、「健康医療先進都市」というビジョンを掲げてきました。山形市におけるこれまでの健康事業の歩みについて、山形市健康医療部健康増進課の齋藤健二氏に伺った。
「山形市には全国に82しかない大学の医学部があり、人口あたりの病院数や医師数も多いという健康医療資源の強みがあります。
また、2019年には山形市が中核市となり、JR山形駅直結のビルに保健所が設置されました。『エビデンスに基づいた施策』を実現するため、保健師や薬剤師、管理栄養士、歯科衛生士、精神保健福祉士などの専門職の見識を活かし、市民の健康データの調査・分析を行うなど、保健所をシンクタンクとして活用する取り組みが進められています」
次に、「エビデンスに基づいた施策」とはどのようなものなのか、同課SUKSK推進係長の大場俊幸氏に伺った。

健康医療部健康増進課
SUKSK推進係長 大場俊幸氏

健康医療部健康増進課長 齋藤健二氏
「山形市民の皆さんの健康を損なう原因を分析したところ、認知症、運動器疾患、脳血管疾患で約8割を占めることが分かりました。これらを予防するため、『食事(S)、運動(U)、休養(K)、社会参加(S)、禁煙・受動喫煙防止(K)』に留意する『SUKSK(スクスク)生活』を独自に提唱しました。それぞれの頭文字をつなげた『SUKSK(スクスク)』というキーワードを用いることで、市民の皆さんにとって分かりやすく、親しみをもってほしいと考えました」
そのような「SUKSK(スクスク)生活」に、市民の皆さんがより楽しく取り組んでもらうことを目的に、2019年9月から始まったのが「山形市健康ポイント事業SUKSK(スクスク)」だ。この事業は、健康づくりでポイントがたまるというもので、専用のスマートフォンアプリや歩数計を活用して、一日の歩数や健康にかかわるイベントへの参加、健診や検診の受診などでポイントをためることができ、ポイントに応じて、記念品の抽選に参加することができるというものだ。
対策
NTTドコモビジネスの「健康マイレージ」を採用し
健康ポイント事業を推進
「山形市健康ポイント事業SUKSK(スクスク)」には、NTTドコモビジネスのサービスである「健康マイレージ」が採用された。健康マイレージ
が目指しているものについて、NTTドコモビジネスの篠原萌が語る。
「目指しているのは、健康寿命の延伸、医療・介護費の抑制、健康意識の向上と行動変容の促進、地域活性化と官民連携、デジタル活用とデータヘルスの促進などです。2025年3月時点で導入自治体数の累計は151自治体で、累計利用者数は75万人以上となっています」
山形市が健康マイレージを採用した理由について、大場氏はQRコードで健康ポイントを得ることができる点が選定のポイントの一つだったと話します。
「例えば山形市街からほど近い千歳山、盃山などは、低山ハイキングとして親しまれているのですが、頂上にはQRコードがあり、読み込むとポイントをためることができます。ポイント事業には市主催の健康講座やお祭りなどのイベントのほか、民間から申請していただいたものもあります。申請内容が趣旨に合致していればポイント対象事業として認定し、QRコードを発行します。QRコードを置くだけで、事業の拡張も容易ですので、例えばある団体がコンサートを開く際に、ポイント事業の対象とすることで、集客ツールとして活用することができます。ちなみに、サッカーJリーグのモンテディオ山形とも連携しています。健康寿命と社会参加には相関関係があるとされていますから、こうした取り組みは山形市が掲げるもう一つのビジョンである『文化創造都市』の方向性にも合致しています」
また、ほかの機能についても山形市の目指す方向と一致していたと、NTTドコモビジネスの町田梨乃は指摘する。
「健康マイレージには、『ウォーキングマップ』という機能があります。ルート上のチェックポイントをすべて通過するとポイントがもらえるという仕組みで、『山寺の歴史と街並みを訪ねる』や『街なかウォーキング』など、ウォーキングのテーマを設定することもできます」(町田)
実際に同機能を活用し、ウォーキングマップの作成に携わるSUKSK推進係の前澤亮氏に同機能への反響について伺った。
「ウォーキングマップには市が独自に作成するものに加え、ボランティア団体の『山形市健康づくり運動普及推進協議会』と協力して作成するマップもあります。同協議会にはいろいろな地域にお住まいの方が参加していますので、地元の方しか知らないような景色や史跡を回ることができます」

健康医療部健康増進課
SUKSK推進係 前澤亮氏

ソリューション&マーケティング本部
ソリューションコンサルティング部
地域協創推進部門第一グループ 篠原萌

ソリューション&マーケティング本部 東北支社
ソリューションコンサルティング部
ソリューション営業部門第三グループ 町田梨乃
さらに町田は、「イベント」「グルメ」などのラベル付けをして写真を投稿する機能についても言及する。
「例えば、いつもと違うところに食事に行きたいときに『グルメ』を参照すれば、投稿している写真や情報を見ることができます。そうした機能も、山形市様が重視している社会参加に貢献できるのではないかと思いました」
山形市健康ポイント事業SUKSK(スクスク)でためたポイントの使い道についても、前澤氏に伺った。
「年2回、1月と7月に大きな抽選会があり、5,000ポイントが1口で山形牛などの特産品や商品券などが当たります。抽選会の前には『あと〇〇ポイント足りないんだけど、何かいいイベントはありませんか』といったお問い合わせをいただくこともあり、市民の皆さんが積極的に参加されていることが実感できます」

効果
実施後9年間で男性0.86年、
女性0.61年の健康寿命延伸を達成
山形市健康ポイント事業SUKSK(スクスク)を実施した7年間で、利用者は順調に増加していると、大場氏は振り返る。
「2025年5月時点で、累計登録者数が1万8,000人に達しました。現在の山形市の人口が20万人弱で、当事業の対象が18歳以上であることを考えると、累計参加率は10%弱ということになります」
この10%弱という数字について、NTTドコモビジネスソリューションズの飛内柊哉は解説する。
「10%近い参加率というのは、全国的に見ても非常に高い数字です。通例は2~3%で一度頭打ちになるというパターンが多いようです。参加率を向上するには、“きっかけづくり”が重要だと我々は考えています。健康意識が高い方に参加していただくのは比較的簡単ですが、無関心層をいかに取り込むかが成功へのカギだと考えます。山形市様の高い参加率は、各所にQRコードを配置したり、ウォーキングコースを工夫するなど、利用者目線に立って、きっかけをうまくつくられた結果ではないかと思います」
利用者数の増加とともに、健康寿命にも変化が表れている。健康ポイント事業SUKSKを中心とした健康施策や介護予防事業などに市民一丸となって取り組んだことで、2013年から2022年の9年間で、健康寿命については男性0.86年、女性0.61年、平均寿命については男性0.78年、女性0.53年延伸している。男女ともに健康寿命の延びが平均寿命の延びを上回り、不健康な期間が縮小するという好ましい結果が得られている。

東北支社 山形支店第一グループ 飛内柊哉
また、2023年には厚生労働省などが主催する「第12回健康寿命を伸ばそう!アワード」で厚生労働大臣最優秀賞を受賞した。受賞理由について、大場氏は次のように話す。
利用者数の増加とともに、健康寿命にも変化が表れている。健康ポイント事業SUKSKを中心とした健康施策や介護予防事業「審査では特に3つの点を評価いただきました。1点目は壮年世代にしっかりアプローチできていること。生活習慣病は若いうちからの予防が大切ですが、山形市では働き盛りの50代、60代、40代というボリュームゾーンにしっかりとアプローチしています。2点目はポイント対象事業の認定などを通じて市内の企業や団体と連携が取れていること。3点目は活動が市全体、市民全体を巻き込んだムーブメントとなっていることです」
展望
個別最適な健康づくりのため、
AIを活用した新機能「AI健康アドバイス」を追加
2025年2月には、今後の展開を見据えてAIを活用した新機能「AI健康アドバイス」を導入した。その狙いについて、大場氏に伺った。
「健康ポイント事業は、集団に一律に働きかけて行動変容を促す『ポピュレーションアプローチ』という理論に基づいた事業です。しかし、医療健康政策には、健康に課題がある人に個別に受診勧奨などを行う『ハイリスクアプローチ』があります。新機能の『AI健康アドバイス』を追加することにより、個別の健康課題へのアプローチが可能になるのではと考えました。健康診断情報を入力すると毎週点数が届くという仕組みです。現在山形市ではさまざまな分野でDXを進めていますので、AIを活用した健康アドバイスは親和性が高いと考えました」
同機能の実装にあたっては、既存の機能を山形市向けにカスタマイズし、アップグレードして臨んだとNTTドコモビジネスの大川貴則は言う。

ビジネスソリューション本部 スマートワールドビジネス部
スマートヘルスケア推進室 大川貴則
「今回、AI健康アドバイスの実装にサービス担当として関わりました。山形市様からはデザインや用語など、いろいろなご要望をいただき、その総数は100件を超えていました。健康になっていただくためにはどういう行動を取れば良いのかということを市民の皆さんに分かりやすく伝えたい、AI健康アドバイスを使いやすくしたいという強い思いを感じました。とはいえ、スマートフォン上に表示するには字数制限などがあります。当時は、いただいたご要望をいかに落とし込むかに注力しました」
前澤氏は、AI健康アドバイスは始まったばかりであるため、課題もあると言う。
「まだまだ、周知が足りていないと感じています。マイナンバーカードと連携することもあり、機能登録が少し難しいという課題もあります。今後はアプリ登録会などを通じて、AI健康アドバイスを周知し、利用者を増やしていきたいと思っています」
最後に、山形市の今後の取り組みについて、齋藤氏に伺った。
「昨年度、山形市の総合的な健康づくりの指針『山形市健康プラン2035』を策定しました。そこには、これまで推進してきた健康ポイント事業をさらに強化し、糖尿病などの生活習慣病の予防に資する個人の行動と健康状態の改善にアプローチするなど高い目標が掲げられています。AI健康アドバイスという新機能も実装しましたので、市民の皆さんには今後も健康寿命の延伸を目指すツールとして使っていただきたいと思っています。使っていただければきっと健康になると信じています」
山形市健康プラン2035には、健康ポイント事業SUKSK(スクスク)の拡充、出前講座の開催などもうたわれている。山形市民の健康寿命をさらに延伸し、年齢を重ねながらもいきいきと生活できる環境の構築に向け、山形市健康医療部健康増進課の挑戦は続く。

山形県山形市
- 組織概要:
- 山形市は山形県の中東部に位置し、県内人口が最多で、県庁所在地でもある。古くは山形城(霞城)の城下町として発展し、2001年には特例市、2019年には中核市へと移行した。東部は宮城県、西部は中山町、南部は上山市・南陽市・東村山郡、北部は天童市・東根市と接する。樹氷の美しい蔵王、桜の名所として名高い馬見ヶ崎さくらラインなどの豊かな自然と、充実した都市機能が両立する、心豊かに暮らすことのできる都市として知られている。
- URL
- https://www.city.yamagata-yamagata.lg.jp/
- ロゴデータ提供:山形市総務部広報課