人口約2,700人の自治体が推進する「学びを止めない」教育DX
LTE端末導入で教育格差ゼロを実現し、将来はAI活用による価値創造も視野に
導入の目的:教育格差の解消、個別最適な学びの実現、コロナ禍でのオンライン学習体制構築など
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NTTドコモビジネスソリューションズ株式会社は全国のお客さまへ営業活動を行うNTTドコモビジネス株式会社のグループ会社です。
※2025年7月、社名変更により、ドコモビジネスソリューションズはNTTドコモビジネスソリューションズに、NTTコミュニケーションズはNTTドコモビジネスになりました。
課題
コロナ禍で顕在化したWi-Fi環境の有無による教育格差
「絶対に1人も取り残さない」思いからLTE端末の導入へ
北海道新篠津村は、石狩管内の北東部に位置する人口3,000人弱の管内で唯一の村である。同村では、2019年に文部科学省が発表したGIGAスクール構想にもとづいて、教育DX施策の検討を開始した。新篠津村教育委員会の吉本浩志氏は、当時を振り返る。
「村内のすべての子どもが等しく端末を活用できること、個別最適な学びを実現することを命題に掲げました。そして、家庭環境や経済状況によって教育格差が生まれないよう、全員の学びを保障したいという強い思いを持ってスタートしました」
しかし導入検討が進む中、2020年、新型コロナウイルス感染症が拡大する。吉本氏は当時の状況を語る。
「コロナ禍に突入したとき、私は中学校の校長でした。当時、何軒かの生徒のご家庭にはWi-Fi環境がなく、オンライン授業が受けられないため、すべての生徒の学びを保障できない状況でした。その経験から、万一の感染症や大規模災害などで長期間登校できない場合にもオンライン授業で『学びをつないでいく』体制を構築しようと考えました。Wi-Fiでは、家庭環境により教育格差が生まれてしまうため、平等にすべての児童・生徒の学びを保障するには、LTE通信しかないと判断しました」
教育長 吉本浩志氏
通信費などの保護者負担を軽減しつつ、「どこでもつながる、学びを止めない」を実現する。その答えが、LTE回線を活用したiPadの導入だった。
対策
新篠津村の要求仕様に適合した的確な提案力を高く評価
ワークショップと手厚い支援で「学びを止めない」体制を実現
GIGAスクール構想第1期を推進するために、新篠津村ではプロポーザル方式で複数のベンダー候補に提案を依頼した。新篠津村教育委員会の櫻田大介氏は、当時の状況を語る。
「唯一、本村の求める仕様に対して具体的な実現プランを提案してくれたのがNTTドコモビジネスソリューションズでした。LTE回線を活用したiPadの提案にとどまらず、我々の目指す学びの環境を実現する道筋の提示やそれに対応できる多様なサービス、手厚い支援体制を評価しました」
NTTドコモビジネスソリューションズ北海道支社の長澤響は、提案の背景をこう説明する。
「新篠津村さまからは、『教育格差を生まない』『学びを止めない』という強いメッセージをいただきました。通信環境や端末は、あくまで手段にすぎません。我々の目的は子どもたちの教育に貢献し、子どもたちの未来をともに育んでいくことです。目的達成に向けた手段として、まずはLTE通信やiPadを提供させていただきました。そして後で述べますが、その先の学びの環境づくりに資する活動をGIGA2期に向けて取り組んで参りました」
北海道支社 ソリューション営業部門 第二グループ
第三チーム 主査 長澤響
総務課兼学校教育係
副主幹 櫻田大介氏
導入に当たり、初めてiPadを使う教員向けにワークショップも実施した。NTTドコモビジネス北海道支社の岡本淑香は当時を振り返る。
「iPadについては、初めて触れる先生が多かったのですが、iPhoneユーザーが多く、あまり抵抗はなかった印象です。基本的なiPadの使い方から始めて、最終的には教科ごとにグループに分け、授業の中でどういう使い方ができそうかを議論していただきました。『この教科だったらこう使える』『課外学習ではこんな使い方ができそう』というアイデアも出てきて、先生方にいろいろ考えていただくきっかけづくりになったと思います」
このようなワークショップや教員間での研修などにより、教員のスキルのばらつきが克服されていった。「ICTに長けた先生とそうではない先生がいらっしゃいましたが、研修を重ねることで苦手な先生方もどんどん上達していきました。そんな先生方の努力もスムーズな導入の一因だったと思っています」(吉本氏)
こうして2020年、新篠津村では児童・生徒全員に1人1台のiPad(LTEモデル)220台が導入され、村の小中学校全校にICTを駆使した「どこでもつながる、学びを止めない」環境が整備された。
効果
コロナ禍でも学びを止めず、石狩管内トップクラスのICT活用度を実現
「楽しいおもちゃ」から「当たり前の文房具」へ、保護者にも高評価
導入したiPad(LTEモデル)には、NTTドコモビジネスの「GIGAスクールパック」を実装。「学習eポータルまなびポケット」による教育データの可視化、「ロイロノート」を活用した協働学習など、ICTを駆使した学びの環境が整った。さらにLTE回線を生かした友好都市とのオンライン交流で、対人交流機会の拡大も実現した。
iPad(LTEモデル)の導入効果は、予想以上に大きいものだった。特にリモート授業で真価を発揮したと、新篠津村立新篠津小学校でICTを担当する濱本雄太氏は、通信環境を高く評価する。
「リモート授業の際に、在宅の児童にきちんと声が届いているかどうかが大きな課題でしたが、LTEのおかげで声が聞こえていないという不安が低減されました。Wi-Fiでしたら、家庭ごとの通信環境への対応がさらに増えていたはずですので、教室の児童と在宅の児童とを同時にケアするという稼働を考えると、LTE選択の意義は大きかったと感じています」
新篠津村立新篠津中学校の加藤智士氏は、前任校のWi-Fi+ノートPCとの比較でLTE+タブレットの優位性を実感しているという。
「前任校では、各学年に数人ずつWi-Fi環境のない家庭があり、一斉に授業を進められないことや、個別対応を余儀なくされるケースがありました。LTE通信で、平等かつフラットな通信環境が利用できることは非常に大きな効果だと思っています。またiPadはタブレットのため持ち運びがしやすく、子どもたちが直感的に操作できて、子どもたちが紙とペンを持っているように使っていますので、タブレットの運用能力は高くなっていると思います。一方、キーボードを打つ能力を補うために、現在はタイピングの練習の時間を設けてサポートしています」
新篠津村の先進性を感じているのは、新篠津村立新篠津小学校の吉成拓人氏だ。
「こちらに赴任した当時、子どもたちのiPadの持ち帰りが非常に早かった印象があります。前任校も同じ石狩管内でしたが、まだ『何年生に配るか』といった議論をしていました。教育委員会と学校が連携しながらコロナ禍に伴うオンライン授業対応をいち早く進めていたため、管内でもトップクラスのICT活用度を実現できていると思います。児童・生徒数が少なく小回りの利く環境だからこそ、意思決定が早く、きめ細かな対応ができたのだと感じています」
教務主任 加藤智士氏
教頭 田中芳憲氏
教務主任 吉成拓人氏
濱本雄太氏
さらに、新篠津村では子どもたちの成長段階に応じた安全な利用環境を整えるため、学年別のフィルタリング設定も導入した。小学校1~4年生、小学校5~6年生、中学校1~3年生の3区分で設定し、学校側の要望に応じてヘルプデスクと連携して柔軟な調整を行った。当初は「楽しいおもちゃ」として夜遅くまで使う児童もいたが、現在ではフィルタリングなどを通じて「当たり前の文房具」として定着している。「いまでは授業で使う、自宅で学習を進めるための道具として定着しています。学芸会でダンスを撮影する、算数の時間に電卓を使うなど、子どもたちから自発的な提案が出ることもあります」(濱本氏)
また、「学びを止めない」を実現する手厚い保守サポート体制も、大きな効果を発揮している。「たとえば小学校低学年では避けられないiPadの画面割れもサポートしてくれますし、4~5年経過してバッテリーが劣化した場合も新しい端末を提供していただけます。そのような手厚いサービスをしていただき、自治体や学校、保護者にとっても大変ありがたいと感じています」(吉本氏)
子どもたちのみならず、保護者からの反応も上々だ。「当初はiPadを持つことでトラブルを心配される意見もあったのですが、そういった問題はこれまで聞いたことがありません。
毎年の保護者アンケートや参観日の懇談会などの折に、端末を活用した学びについて一定の評価をいただいています」と新篠津村立新篠津中学校の田中芳憲氏は語る。
展望
第2期はAI活用とクリティカルシンキング育成で「価値創造」へ
小規模自治体の機動力を強みに、柔軟なアップデートを継続
すでに新篠津村ではGIGAスクール構想第2期の端末が納品され、2026年3月からの本格運用に向けた準備が進んでいる。櫻田氏は今後の方向性をこう語る。
「いままで通り『当たり前の文房具』として学校でうまく活用していただいて、よりICTの利活用を進めていきたいです。紙と鉛筆も大事にしながら、iPad(LTEモデル)の特性を生かした教育のデジタル化を進めていきたいと考えています」(櫻田氏)
吉本氏は固定的なゴールを置かず、社会の変化に応じて柔軟にアップデートしていきたいと考えている。
「インターネット環境やAIなどデジタル技術の進展が目覚ましく、ゴールは何年先かわかりません。とにかく、常に社会情勢・動向を見据えながら、『いまなにをすれば、子どもたちがしなやかな大人として生きていけるか』という視点で、いまあるものを最大限に活用することが重要だと思っています」
なお、すでに新篠津中学校ではAI活用の試行が始まっている。加藤氏はガイドラインを整備し、保護者の理解を得た上で生成AIを授業に取り入れた。
「教員管理下でリンクを共有し、生徒の質問に回答するチュートリアル的な使い方から始めています。次の目標は『価値交換から価値創造へ』。単に調べて答えを出すだけでなく、ディスカッションを深めてクリティカルシンキングを育む。その先の『新しい価値の創造』がICTで実現できたら、最良のゴールだと考えています」(加藤氏)
NTTドコモビジネスソリューションズ側も、新篠津村の挑戦を全力でサポートする構えだ。
「営業担当として、皆さまのご要望やニーズを日々把握することにしっかり取り組んでいきます。GIGA1期から2期にかけても、『まなびポケット(学習eポータル)』『ロイロノート(授業支援)』、最近では『ミライシード ドリルパーク(AIドリル)』『WEBQU(学習生活の満足度に関するアンケート機能)』など、各ニーズに合わせたソリューションを伴走的にご提供させていただいています。
端末を入れて終わりではなく、AIのようなどんどん便利になっていくツールがある中で、引き続きニーズを把握しながらご提案させていただきたいと思っています。もちろん、AIのリスク回避をケアするために全国の学校の事例なども交えて、皆さまとの情報共有もしていくつもりです。」(長澤)
■対応学年・教科:小学1年~中学3年 5教科(国・算/数・理・社・英)
吉本氏は、子どもの減少を「課題ではない」と言い切る。「それを弱みとして捉えるか、強みとして捉えるかは、指導する、教育環境を整える側の考え方次第だと思っています。与えられた教育環境の中で多様な子どもたち一人ひとりの資質・能力を育む工夫をしていけばいいだけです。そんな学校の挑戦に対して、教育委員会は熱いエールを送る応援団であり続けたいですね」(吉本氏)
最後に吉本氏は、NTTドコモビジネスソリューションズとの今後の関係性についてこう語った。「長澤さんと岡本さんのお話を伺って、『新篠津村の教育に貢献したい』『学校を支えていく、一つの役割を担おう』という熱い思いが非常に伝わってきました。これからもいろいろな場面でご支援をいただきながら、新篠津村の小学校・中学校の教育環境をより充実させていきたいと思います。引き続き、ご支援をよろしくお願いします」
北海道新篠津村
- 組織概要:
- 北海道石狩管内の北東部に位置する、人口2,678人(2026年2月1日現在)の石狩管内で唯一の村。基幹産業は農業で、とくに稲作が盛んで道内有数の米どころとして知られている。近年では「星空の街・あおぞらの街全国協議会」で協議会会長賞を受賞するなど、天文台を活用した観光振興にも力を入れている。
- URL
- https://www.vill.shinshinotsu.hokkaido.jp/