代表電話をワンナンバー化し、日本初の災害時コールフロー切り替えを実装
人にしかできない仕事に注力するための「電話DX」をデジタル化の一歩に
導入の目的:市民サービス向上、業務効率化、BCP対策(災害対応強化)など
市長の想い
大分県津久見市は、人口約1万5,000人のコンパクトなまちです。コンパクトな分だけ、人と人の関係が緊密で、市民と行政の距離の近さが本市の強みであると感じています。一方、人口減少は地方都市共通の課題であり、従来と同水準の行政サービスを維持するためには、業務の質を落とさずに効率化を図る工夫が不可欠です。
今回のナビダイヤル導入は、職員からのボトムアップの提案がきっかけでした。市民の皆さんが電話1本で適切な担当部署に「迷わずつながる」環境を整えることは、利便性の向上だけでなく、職員が本来注力すべき対面の業務に集中するための基盤づくりでもあります。たとえば、四浦半島は大分県内最大である5千本以上の河津桜が咲く名所ですが、開花シーズンとなる2月から3月にかけては、開花状況へのお問い合わせが殺到します。季節ごとに集中するお問い合わせを自動音声で一次対応できれば、職員は市民一人ひとりとのより深い対話など、他の業務に時間を使えるようになるのではないかと期待しています。
デジタル化の目的は、デジタルにすべて置き換えることではないと捉えています。デジタル化で時間を捻出できた分だけ、アナログの対面サポートなどに注力できればとの想いを抱いています。当市でのデジタル化はまだまだ進んでいない現状があります。新庁舎への移転に合わせた勤怠システムのデジタル化、各システム同士の連動なども含めて、できる部分から少しずつでも進めていきたいと考えています。今後も着実に各種デジタル化を進めていき、効率化が図れた分、人と人がつながるアナログの価値をこれからも大切にしていきたいと思っています。今回の代表電話へのナビダイヤル導入は、その大きな第一歩であると感じています。
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NTTドコモビジネスソリューションズ株式会社は全国のお客さまへ営業活動を行うNTTドコモビジネス株式会社のグループ会社です。
※2025年7月、社名変更により、ドコモビジネスソリューションズはNTTドコモビジネスソリューションズに、NTTコミュニケーションズはNTTドコモビジネスになりました。
課題
代表電話は交換手がすべての問い合わせを取り次ぐ構造
誤接続・時間外対応・イベント対応が職員の日常的な負担に
大分県津久見市は、豊後水道に面した人口約1万5,000人の市。コンパクトな自治体ならではの行政と市民の距離の近さが特長となっている。一方で、人口減少という課題は全国の地方都市と同様に深刻だ。限られた職員数で行政サービスの質を維持・向上させるためには、デジタルを活用した業務の効率化が避けられない課題となっていた。その中で、長年目に見えない負担として蓄積されていたのが代表電話の対応だった。
「従来、交換手が代表電話を受け、多様な問い合わせをすべて担当部署に転送していました。緊急かどうかの判断がつかないので、時間外でもすべて職員に転送することになり、かなりの負担になっていました」と、津久見市の川野貴志氏は振り返る。
課題はそれだけにとどまらない。河津桜や「つくみ港まつり」の花火大会といった大型イベントの開催時期には、お問い合わせが集中し、ほかの電話応対に支障をきたすこともあった。「市外からのお客さまが桜の咲き具合を代表番号に問い合わせてくるケースが1日に何件もあり、担当部署が応対に追われていました」(川野氏)
さらに、一部の市民からの長時間の苦情電話が職員を長時間拘束するケースも発生しており、カスタマーハラスメント対策の観点からも改善が求められていた。
主幹 川野貴志氏
対策
職員からのボトムアップで電話DXプロジェクトが動き出す
自治体初の災害時コールフロー連動で「ワンナンバー」を実現
改革のきっかけは、現場の職員からのボトムアップによる提言だった。そこにNTTドコモビジネスソリューションズ(以下、dBS)の足立博之からの提案が重なり、ナビダイヤルの導入が決定した。
九州支社 ソリューション営業部門 第一グループ
担当部長 足立博之
「自治体さまの働き方改革は、どうしても遅れがちです。しかし、職員の仕事は今後ますます大変になっていきます。小さな市だからこそ、クイックに変われると思います。まずは交換士のマンパワーを低減して、市民と向き合うアナログな部分に使っていくというストーリーで提案を進めました」(足立)
選定にあたって津久見市では複数のサービスを比較検討したが、最終的に決め手となったのは将来的なDX構想も含めた総合的な提案内容だった。津久見市の秦野貴光氏は、当時を振り返る。
室長 秦野貴光氏
「dBSさんからは、今回だけでなく新庁舎整備に向けたクラウド電話やスマートフォン活用なども含めたビジョンがあり、長期的に取り組めると判断しました」
2026年2月より試験運用を開始した津久見市のナビダイヤルは、代表番号に着信したすべての呼を音声ガイダンスで自動振り分けする。第1階層で4つのグループに分岐し、さらに第2階層で各担当課へ直通させるコールフローを構築した。
とりわけ、今回の導入の特徴となっているのが災害対応だ。南海トラフ地震への対策が急務となるなか、平常時はナビダイヤルによる自動振り分けを行いながら、災害発生時にはWeb上でコールフローを切り替えるだけで同じ番号から災害対策本部に直接つながる仕組みを実装した。
「別の専用ダイヤルを周知する必要はありません。何かあったら、いつもの番号にかけるだけで災害対策本部につながるようになっています」(足立)。代表番号のナビダイヤル化と災害時の直通連動は、自治体への導入として全国初のケースだ。
またイベント時には専用のコールフローに切り替えることで、桜の開花状況や花火大会へのお問い合わせをイベント担当課に直接ルーティングするようになっている。「以前はイベントのたびに専用番号を周知していたのですが、それでも代表番号にかかってきていました。ワンナンバー化でその問題もまとめて解決できる見込みです」(川野氏)
dBSの山﨑和生は、同市がナビダイヤル導入を決めた経緯を話す。
「庁舎移転のご支援という入口から関わらせていただき、スマートフォンの内線化やチャットツールの導入など、音声のデジタル化を軸に複合的にご提案しました。やはりナビダイヤルによる効率化のストーリーが、津久見市さんに響いたのかなと感じています」
九州支社 大分支店 第一グループ
担当課長 山崎和生
同市は、高齢の方の自動音声への抵抗感や、「自治体の電話は人が出るもの」という議会からの意見などに対して、丁寧に対応しつつ、まず試験運用としてナビダイヤルを導入。フィードバックを重ねながら設定を磨き込んでいく段階的なアプローチをとった。
効果
市民の声をデータで可視化、呼量分析が次の打ち手を生む
取り次ぎ稼働の削減で、職員は本来の仕事に集中できる
2026年2月の試験運用開始後、市民から旧代表番号の廃止を心配するお問い合わせがあったものの、概ね大きなトラブルもなく稼働している。
ナビダイヤルが従来の電話交換と大きく異なるのは、通話データの可視化にある。
「いままでは、PBXに入ってきた呼量しか見えていませんでしたが、ナビダイヤルになると、話中ではじかれた呼も含めて全体が把握できます。どの曜日、どの時間帯に電話が集中しているかが分析でき、人員配置の最適化や情報提供の改善に活用できます」(足立)。たとえば河津桜の開花情報へのお問い合わせが多い時期には、ホームページなどで能動的に開花状況を発信するなど、お問い合わせ電話そのものを減らすアクションにデータを活用していく考えだ。
また、ナビダイヤルは発信者への有料アナウンスが入ることで、かけた市民が用件を端的に伝えようとする効果もある。応対時間が短くなることで、長時間にわたる不当な電話の抑止も期待できるという。そのようなカスタマーハラスメント対策としての機能も導入の動機となっていた。
代表番号のナビダイヤル化と災害時コールフローの連動という今回の仕組みは、自治体への導入として全国初のケースだ。津久見市の取り組みはすでに同様の課題を抱える他の自治体からも注目を集めており、先行事例としての役割を担い始めている。
展望
新庁舎完成で「行かなくていい庁舎」と「来て完結する庁舎」を両立
EXの向上でCXを高め、働き方改革で市民サービスの質を上げる
今回のナビダイヤル導入は、2027年1月に予定する新庁舎開庁に向けた電話DXの「前段整備」と位置付けられている。新庁舎では2階に窓口機能を集約し、来庁者がワンフロアで手続きを完結できる設計を採用する一方、クラウド電話基盤への移行と各部署へのスマートフォン配備による働き方改革も検討している。津久見市の後藤可苗氏は、新庁舎の機能について語る。
主幹 後藤可苗氏
「現在建設中の新庁舎は、市民生活に関わる手続きがワンフロアで可能となり、子育て支援拠点や市民交流拠点を複合的に整備します。あらゆる世代の方に利用しやすい庁舎にするためにはデジタル化も必要であり、その両方の機能を今後整えていきたいと考えています」
「ナビダイヤルを皮切りにデジタル化を進めていきますが、本丸は市民サービスの向上です。デジタルで効率化した時間を、マンパワーが必要な対面サービスや高齢の方への伴走支援に使っていく。それが津久見市の目指す姿です」と、川野氏は、デジタル化の本質について語る。
足立は、EX(従業員体験)とCX(市民体験)の連鎖という視点から補足する。「職員の皆さまが生き生きと働けることが、良い市民サービスの源になると思っています。EXが良くなればCXの向上につながり、そういう職場には良い人材も集まってくるでしょう。クラウドやスマートフォンで場所を選ばずパフォーマンスを発揮できる環境が、その連鎖の出発点になればと願っています」
dBSとしては、今回の津久見市を大分県初、全国でも先進的な自治体導入事例として、県内外への水平展開を図る考えだ。「同様の課題を抱える自治体さまは非常に多いのですが、なぜ電話の取り次ぎを自動化するのか、そのストーリーがなければ一歩を踏み出すことは難しいようです。津久見市さまの事例が、その背中を押すきっかけになってくれればと思っています」(足立)
川野氏は最後にNTTドコモビジネスとNTTドコモビジネスソリューションズ(以下NTTドコモビジネスグループ)への期待を語る。「今回の導入に際しては、いろいろとサポートしていただきました。新庁舎の竣工に向けて、さらに多くの取り組みが待っていますので、引き続き新たな提案をいただいて、少しでも前進できるようにサポートしていただければと思います」
dBSの水島正美は「担当者さまのいちばん近くで、さまざまな選択肢をお伝えしながら最適なサービスを選んでいただける取り組みを続けていきます。普段から頻繁に足を運んで、対面でお話をする関係を大切にしていきたいと考えています」と、伴走型サポートに注力していく姿勢を示した。
九州支社 大分支店 第一グループ
水島正美
秦野氏も「ナビダイヤルを、ほかの自治体にも広げていっていただきたいですね。これが広まっていくと、自動音声が当たり前という認識になっていくでしょう。NTTドコモビジネスグループには県内自治体への展開をぜひ期待しています」と言葉を添えた。人口減少時代を生きる地方自治体が「限られた人手で、より良いサービスをどう届けるか」という問いに向き合うとき、その答えは津久見市が切り開いた「電話DX」にあるのかもしれない。
大分県津久見市
- 自治体概要:
- 大分市から南東約30キロメートル、豊後水道に面した人口約1万5,000人の市。樹齢850年以上を誇る日本最古のみかんの木(国の天然記念物)、日本一の石灰石採掘量を誇るセメント産業、春夏甲子園制覇の実績を持つ津久見高校野球部など、“日本一”を複数持つ個性豊かな自治体として知られている。
- URL
- https://www.city.tsukumi.oita.jp/